アニメ制作において、同じ人が同じ回に「脚本」と「絵コンテ」を両方担当する"二刀流"のケースを近年よく目にするようになった。
アニメ業界変わってきたなー。以前は同じ人が同じ回に脚本と絵コンテ両方やってたらかなり驚いていたのに、いまや当然のように見かける。「プリンセスコネクト!Re:Dive」で金崎貴臣監督が二刀流をやり遂げてからはっきり増えた
— ロブ (@vector_AB) April 26, 2023
もちろん私とて各クールのアニメを全部見ているわけもなく、アニメ業界全体で本当にこの二刀流のケースが増えたのかどうかは分からない。あくまで私個人の感覚の話である。
それでも一応これまで見つけたらTwitterに書き残してきたので、私の過去postと自分自身の記憶を遡って二刀流のケースを抽出してみた。それが下の表である。
制作年 | タイトル | 回 | 担当者 |
---|---|---|---|
2023 | 聖女の魔力は万能です(2期) | 第1話 | 井畑翔太 (※監督) |
2023 | 異世界でチート能力を手にした俺は、 現実世界をも無双する ~レベルアップは人生を変えた~ |
第3話 | ひいろゆきな |
第5話 | 田辺慎吾 | ||
第8話 | 長谷川千夏 | ||
2023 | スパイ教室(1期) | 第8話 | 川口敬一郎 |
2023 | 異世界のんびり農家 | 第1,2,6, 9,12話 |
倉谷涼一 (※監督) |
2022 | ヤマノススメ(4期) | 第5,6,9,12話 | 山本裕介 (※監督) |
第3話 | カトキハジメ | ||
第7話 | ちな | ||
2022 | ルミナスウィッチーズ | 第1,2,7話 | 佐伯昭志 (※監督) |
第6話 | 春藤佳奈 | ||
2022 | リコリス・リコイル | 第1話 | 足立慎吾 (※監督) |
第5,6話 | 鹿間貴裕 | ||
2022 | プリンセスコネクト!Re:Dive(2期) | 第1,2,3,5, 7~12話 |
金崎貴臣 (※総監督) |
2021 | 聖女の魔力は万能です(1期) | 第1話 | 井畑翔太 (※監督) |
2020 | アサルトリリィ | 第1,3,7,12話 | 佐伯昭志 (※監督) |
2020 | プリンセスコネクト!Re:Dive(1期) | 第1~7, 10~13話 |
金崎貴臣 (※監督) |
2018 | ヤマノススメ(3期) | 第1話 | 山本裕介 (※監督) |
2017 ~2012 |
てーきゅう | 全9期、全話 | 板垣伸 (※監督) |
2015 | 放課後のプレアデス(TV版) | 第1~4, 6,12話 |
佐伯昭志 (※監督) |
2013 | ヤマノススメ(1期) ※5分アニメ |
全13話 | 山本裕介 (※監督) |
2010 | ストライクウィッチーズ(2期) | 第6話 | 佐伯昭志 |
2008 | ストライクウィッチーズ(1期) | 第6話 | 佐伯昭志 |
私が初めて「同じ人が同じ回に「脚本」と「絵コンテ」を両方やっていること」に着目したのは2008年のストライクウィッチーズ1期の第6話だった。多くのファンから神回と称されたサーニャ回である。担当は佐伯昭志。ちなみに2年後の第2期でも、狙ったかどうだか同じく第6話で二刀流をやっている。
そこから時期は飛んで次に二刀流を目にしたのはヤマノススメ第1期。ただしヤマノススメ第1期は5分アニメだったので、監督の山本裕介が自ら脚本と絵コンテをやるのはあまり違和感のないことだった。
次に見かけたのはやはり佐伯昭志の名前である。放課後のプレアデスでは多くの回を担当した。ただしここでも注釈をつけておくと、このときは1つの回につき脚本も絵コンテも複数人で担当した回が多かったので、仕事の負担感は一概に言えない。
てーきゅうでは監督の板垣伸が全9期・全話を担当した。5分アニメとはいえこれはすごいことだと思った。
なんと2013年のpostが残っていた。
てーきゅう総評。板垣伸が監督と脚本とキャラデザと絵コンテと演出を一人で全部やるとこうなるんだなと思った。5分アニメだからできるんだうな。
— ロブ (@vector_AB) July 14, 2013
板垣伸監督の話題はこのあとまた触れる。
そして個人的に二刀流増加のターニングポイントと思っているのが「プリンセスコネクト!Re:Dive 第1期」(2020年)である。
30分アニメにもかかわらず、全13話中なんと11回も金崎貴臣監督が自ら脚本と絵コンテを担った。毎回のようにEDテロップで脚本と絵コンテに監督の名前が出てくるので驚いたのをいまでも覚えている。
しかも2020年と言えばコロナ禍のピーク。東京オリンピックが延期になるほど社会全体が最もピリピリしていた時期である。にもかかわらず作画は極めて安定していて、しかも戦闘シーンは劇場版クオリティだった。
2022年には話題作「リコリス・リコイル」が放送。90年代から長年作画畑を歩んできた足立慎吾が監督として脚本にも挑戦したことが話題を呼んだ。足立慎吾といえば個人的にソードアート・オンラインやWORKING!!でその名前を覚えていたので、本作で監督と脚本もやると聞いて驚いたものである。また本作では、第5話と第6話でも鹿間貴裕が二刀流。
そこから先、単発での二刀流を見かけるようになった。こうして表にまとめてみても30分アニメで監督以外の担当による二刀流が現れ始めたことが分かる。
直近で印象的だったのは「異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する~レベルアップは人生を変えた~」(通称いせれべ)で、監督は先ほども触れた板垣伸。そして板垣伸ご本人ではなく別の人に二刀流をさせている
その一方で、二刀流が増えた別の理由として「コロナ禍で二刀流を余儀なくされた説」もあるかもしれない。アニメ業界は相変わらず供給過多だし、アニメ化企画と時間だけは進むのに人が集められず脚本と絵コンテを両方やらないといけなくなったのかもしれない。
久しぶりの #スパイ教室 #spyroom 第8話、面白かった。てか川口敬一郎監督が脚本と絵コンテ両方やってる!? (制作陣のリソースが足りてない可能性もある)
— ロブ (@vector_AB) March 13, 2023
そんなわけで、二刀流の増加がポジティブな変化なのかネガティブな変化なのかもわからず、そもそも本当に増えているのか客観的なエビデンスも無いんだけど、足掛け15年ほどアニメのEDで脚本と絵コンテをチェックしてきた私の観測範囲の中では増えたよなぁという感想をまとめてみた。
何年後かにこの表をアップデートできたらいいな。