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たまには長文を

お兄ちゃんはおしまい!感想

作画へのこだわりが随所に感じられる面白い作品だった。

(以下ネタバレあり)

 

EDのヌルヌル作画に度肝を抜かれた視聴者は多かろう。本編でもキャラはよく動いていた。普通なら動かさない場所でも動いていた。
その最たるは第8話で間違いない。第8話の絵コンテ・演出は田中宏紀。作画オタクではない私でも名前を知っているくらい有名な方である。(多分・・)
食後に皿を洗うシーンではなぜか全身がリアルに動いていて、見ていてびっくりした。


作画へのこだわりはなにも動きだけではない。
クレープを食べるシーンで、クレープの方に「歯型」が残っているのを見たときは「そこまでするか!?」と思った。

 

また本編にはあまり出てこなかったけど、モブキャラもちゃんと描き分けていてちょっとした動作から人となりが垣間見えた。原作へのリスペクトがすごい。


それにしても、タイトルの「おしまい!」は普通に「お終い」だと思ってたけれど、もしかしてみはり目線での「推し妹」にもかかっていたのだろうか。だとしたらうまいタイトルだと思う。


作画に隠れて実は脚本も面白かった。
特に生理について取り上げたのが強烈だった。女の子になって楽しいことばかりではないことを生々しく描いていて、単なるお気楽フィクションにしない原作者のこだわりが滲み出ていたように思う。また髪の洗い方とか化粧までやるところがリアリティを際立たせていた。
TSモノでリアリティを語るなと思われるかもしれないが、大事なのはその作品の世界観の中で矛盾していないことである。

たとえば「トークが始まる美容室は苦手」みたいな台詞があった。「ある日突然女の子になった」という設定にも関わらず私たち視聴者がまひろに対して親近感を抱くのはこのあたりに共感を覚えるからだろう。

 

最終回の第12話は特に背景の書き込みがすごくて、数年前の動画工房を思わせる情報量だった。

全体を通して、脚本・作画・音楽どれを取っても完成度が非常に高く、制作陣の「良いものを作りたい」という熱意が随所に感じられる良作だった。