change direction

たまには長文を

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-感想

既製品や3Dプリンタで一通りなんでも手に入る時代に、敢えて手作りする面白さを追求することで友情が深まる温かい作品。

(以下ネタバレあり)

 

とにかく作画が良い。派手なアクションがあるわけでも線が緻密なわけでもない。けれどキャラクターの動作やちょっとした仕草が生き生きとしていて「アニメーション」の原点を見た気がした。

特に印象的だったのは「おいしい」と言わずにおいしいことを描写するシーンと、座ってたぷりんが立ち上がるカット。身体の動かし方がめちゃくちゃリアルだった。

 

 

たくみとせるふが校内で一位と三位なのも地味に好き。

舞台は新潟県三条市。いかにも舞台とか聖地として視聴者に押し付けてくるのではなく、さりげなくその土地の要素を忍ばせるところが良い。


せるふのキャラ設定の解像度が高い。単に「浮いている変なヤツ」ではなく、しっかりその特異性が描かれている。
一番顕著だったのはせるふとたくみが知り合うシーン。
たくみはその時点でまだぷりんのことを知らないのに、せるふはお構いなしにぷりんの話題を話し続ける。「たくみはぷりんのことを知らない」ことが分かってない。他人の立場に立って物事を考えられない描写が、嫌なほどリアル。


そんなせるふも第11話でついにケガをしなくなる。毎回ノルマと言わんばかりにどこかしらケガをしていたことを考えれば、これも立派な成長であろう。(それでも第12話で部室の部材を外そうとしてケガするわけだが・・)

序盤でせるふがねじ止めに失敗した本棚を部長がちゃんと使っているのも良い。心温まるストーリーだし、それを終盤で明らかにすることでせるふの成長がより強調される。綺麗に作ることだけがDIYの面白さではないという本作のテーマとも見事に合致するワンシーン。

頑張って集めたツリーハウス用の木材が勘違いで捨てられる不運に対してもお金で解決せず創意工夫で乗り越えて、DIY部員だけでなく地域との関わりも広がっていく。そしてせるふとぷりんの友情が改めて深まる。
それが細部にまでとことんこだわった作画に乗って、きっと多くの視聴者の心に届いたことだろう。

さすが筆安一幸の全話脚本。まさに「職人が手掛けた至高の一品」的な名作だった。