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たまには長文を

お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件感想

見進めるのがとにかくキツかった。3分に1回一時停止して呼吸を整える必要があった。

(以下ネタバレあり)

 

かつていじめられていた経験からすっかり自己評価が低くなった主人公と、両親から大切にされなかった経験から外向きの顔を作って他人との距離を取るヒロイン。隣同士で一人暮らしという似た境遇同士の邂逅が、二人に少しずつ変化をもたらしていく――。


「明らかにお互い好きなんだからさっさとどちらかが告白して付き合っちゃえよ」と、傍から見ればそう思うのだろうがそのよくあるツッコミには私は共感できない。
この二人の背景を踏まえれば、自分の恋心を相手に打ち明けるどころか他人を好きになること自体が未知すぎる体験であろうからだ。

その感覚は私自身も(――特にこれまでいじめられたり親から不当な扱いを受けたりした経験がない幸運な私でさえ――)強く共感するところである。

わけても現代は何がセクハラに該当するか全く読めない時代である。「相手がセクハラだと感じたらそれはセクハラ」、そのように現代社会の最新モラルを学んだ常識人ほど恋愛から距離を取るのはリスクマネジメントとして当然の選択であろう。


そんなわけで、背景は多少違えどこのヘタレで卑屈な主人公がどうにも自分自身と重なって仕方なかった。たぶん私自身がこの主人公と同じシチュエーションに陥ったとしてもきっとこの主人公と同じ言動を取るであろう。通い妻上等に毎日夕食を共にしてもである。


つまるところ、毎週息も絶え絶えに全12話を見てきたキツさの正体本質とは、
主人公のヘタレ具合そのものではなく――、
ヒロインとの激甘展開でもなく――、
この主人公の言動から溢れる、まるで私の人格をコピーしたかのような「不気味なほどのリアリティ」であった。

なんというか鏡に映った自分が動いて何かしゃべっているかのような感覚だった。

 

 

 

一方でラブコメには身も蓋もない話だけど結局この二人が結ばれたのはお互い顔が良かったからだよなぁとも思う。お互い相手の顔が良いことは明言しているし、初手の時点で相手に好感を持っていなければ通い妻になることも毎晩家に迎え入れることもないだろう。

あとはいつきと千歳のカップルか。主人公組を絶対に裏切らない理解者兼二人の関係を進める進行役兼視聴者のツッコミを代弁する役という3つの役割としてうまく機能していた。中盤からは門脇というイケメンキャラまで理解者に加わってもう盤石という印象。メインキャラが5人しかいなくても十分成立する脚本である。
ただし天使様の彼氏が周だと分かったときのクラスメイトの言動はあまりにも小物過ぎた。あれきっと実際はもっとバレにくいような陰湿な・・、やめておこう。


とはいえ最終回の展開、特にヒロインの行動にはまぁまぁ共感できた。全く一歩も踏み出さない主人公に半年以上付き合ったのだから、強引に外堀を埋めに行くヒロインは強い。それは全くズルいことではない。


そんなこんなでヒロインも主人公も自己肯定感を高めてついに告白して結ばれたわけだけど、そうなってくると今度はタイトルの「駄目人間にされていた件」という言い回しにイラついてくる。どこが駄目人間なのだろうか。一番卑屈なのは原作者では・・。

 

あとはアニメとしての完成度で言うと作画のブレが残念だった。シーンごとに主人公の顔が全然違うのはなんとも悲しい。制作はproject No.9。そこまで悪いイメージはなかったが今回は何かのリソース(人・金・時間)が不足していたのだろう。

 

また異世界や外国設定でもないのに車が謎に右側通行だった。まぁ全部中国にやらせたからかな。中国は右側通行なので。