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劇場版 乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…感想

特に悪いところがなく、「劇場版アニメの脚本とはかくあるべし」という基本中の基本を見た感じ。その代わりに最初から最後まで「この先の展開」が予想できてしまい「まぁそういう展開になるよねー」と何度も思いながら見ていた。

(以下ネタバレあり)


【あらすじ】

ある日、カタリナの使い魔・ポチが逃げ出してしまう。それを追ってきたカタリナは、ポチが逃げ込んだ薄暗い倉庫の奥で謎の小鳥を発見する。カタリナはその小鳥をピヨと名付け、とりあえず飼うことにした。
同じ頃、ムトラク王国の商隊がソルシエ王国に向かっていた。中でも隊長の青年・アーキルは動物と心を通わせる能力を持っており、偶然出会ったカタリナに対してカタリナの裏表のなさを見抜いて興味を持った。実はアーキルはムトラク王国の王子の一人であった。一方のカタリナも、アーキルに対してはどこか初対面ではないような印象を持った。
ソルシエ王国とムトラク王国の間には国交がなく、また予定よりも大幅に早くやってきたムトラク王国のアーキルたちに対して、ソルシエ王国側は密かに警戒する。
実際、ムトラク王国の真の目的は封印された聖鳥を手中に収めることであった。
アーキルたちの滞在から少し経った頃、カタリナはアーキルに対して抱いていた既視感の正体を思い出す。それは転生前にあっちゃんから借りてプレイしたもう一つのゲームだった。そのゲームでもバッドエンドが用意されていることをカタリナは思い出し、アーキルが国王に使い捨てられる結末を回避しようと考えた。前世の記憶やゲームのことを説明しても理解してもらえるわけがないと知っていたカタリナは、それでも夢のお告げと称してアーキルの未来を語り聖鳥奪還を諦めるように促す。自分の置かれている状況や今後の未来まで言い当てられたアーキルは驚いたが、しかし今更計画を変更することはできず聖鳥探しを続けついに倉庫の奥で呪いの箱を発見してしまう。ムトラク王国で動物を操れるのはアーキルだけではなく、アーキルの様子を常時監視しているカラスもいたためだ。
アーキルは商人とともに呪いの箱を持ってソルシエ王国を抜け出した。道中、動物の騒ぎ声がするのでアーキルは馬車を降りて周囲を確認した。そのとき、好奇心に駆られて商人が呪いの箱を開けてしまい、聖鳥が復活してしまった。呪われた聖鳥が街に向かえば大きな被害が出る。遠くからでもそれとわかる呪われた聖鳥を見たカタリナたちは危険を承知で聖鳥の元へ向かう。
聖鳥をどうにか町ではなく湖に誘導したカタリナたちは、全員が力を合わせて聖鳥の動きを封じ、最後は光の魔法を持つマリアによって呪いを解こうとした。解くには至らずも、呪いの原因が右足の鎖であることが分かったカタリナは、再びアーキルと協力してついに鎖を破壊した。聖鳥の呪いは解かれ本来の金色の身体が姿を現した。ムトラク王国の王子が動物を扱えるのは元々聖鳥の力の一部であり、その力が悪用されていることを知った聖鳥はアーキル以外からその力を消滅させた。これでアーキルたちは自由の身となった。またピヨは聖鳥の一部であったことからピヨも聖鳥本体に取り込まれた。
後日、アーキルたちとの別れの折、聖鳥はカタリナたちから一連のやり取りの記憶を消すと告げた。自身の能力が再び人々の争いの種とならないようにするためである。カタリナは拒んだがそれは実行され、アーキルたちとの数日間を忘却した。


最後、記憶まで消してしまうのはなんとも寂しいエンディングだが、劇場版アニメのお作法に完全に則っているとも言える。

劇場版が本編と独立して制作される場合、ほとんどのケースで原作やアニメ本編に干渉しないように作られる。そのため、
舞台の移動(これはない場合もある)→映画オリキャラ登場→主人公が巻き込まれる→解決→今生の別れ
というのがテンプレと化している。もちろんそれが悪いと言っているわけではなく、色々な制約を加味した上で落ち着く最適解なのだと思う。

本作もこのパターンにしっかり沿っていた。その上で視聴者(観客)を飽きさせない工夫が散りばめられていた。
まずストーリーの進行役はポチとピヨがバランスよく務めた。序盤はポチが逃げ出してカタリナを倉庫まで誘導する。その後はピヨがテントに潜り込んだり、アーキルと仲良くなるきっかけを作ったり、アーキルを救うヒントが描かれた本を指し示したりと完全に進行役だった。
こういう進行役、別作品を例に出すなら劇場版名探偵コナンでいうところの元太にあたる。普通なら行かないところに首を突っ込んでストーリーを進める役が必要なのだ。
もしこの進行役が全部ポチだった場合は見ている方も結構なストレスになろう。カタリナの静止を無視して何度もあちこち勝手に動きすぎてはイライラするものだ。その点、進行役をうまいこと動物2匹に分散させたのは上手かった

後半ではスピードの出し過ぎでピョンピョン跳ねる馬車が、崩れる橋をギリギリ渡り切るアクション映画みたいなシーンもあった。あまりはめふらの作風には合わない感じもするが、せっかくの映画だし制作陣にも多少遊び心があったのだろう。個人的には面白かったし好意的に受け止めた。

終盤で呪われた聖鳥を抑えるために全員で力を合わせるシーンはテンプレだとしても大好きな展開だし、自分が犠牲になってでも周囲の人たちを守りたいという行動原理には共感できた。

あと変なところで印象に残っているのはエンディング。私はスタッフロール(エンドロール)確認ガチ勢なのでED中もスタッフの名前をずっと見ていたのだが、明らかに関係者全員表示されてないのにEDが開けてエピローグに進んだので一人でビビっていた。・・と思ったらEDの途中にカタリナと別れたアーキルの様子が差し込まれたあとまたEDに戻ったのでまたまた驚いていた。
まぁーでもangelaってそういう曲作るよね、とも思った。2023年秋クールで放送している『でこぼこ魔女の親子事情』のEDでも、EDの最中に次回予告入れてくるし。

 


全体的に振り返っても特に悪いところがなく、面白く見せる工夫も含めて丁寧な脚本だった。

 

 

[アニメ2期の感想]

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