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劇場版プリンセス・プリンシパル Crown Handler第2章感想

先の読めない展開と様々な思惑が交錯するスパイアクションらしい仕上がり。

(以下ネタバレあり)

 

【あらすじ】
ケイバーライトをさらに大型化した「ケイバーライト爆弾」の開発に成功した共和国。しかしその3発が王国側へ盗まれてしまった。
時を同じくして、アルビオン王国王位継承権第三位の王子・リチャードが5年ぶりに王国へ帰ってきた。派手好きのリチャードが盛大に凱旋している最中さなか、何者かによって狙撃される。幸い銃弾は心臓を外れ右肩に当たりリチャードは一命を取り留めた。
開店前のパブを訪れたドロシーは合言葉を言って一番奥の席へ進み、エルからチーム白鳩への指令を受け取る。その内容はケイバーライト爆弾とその制御装置の捜索と奪還であった。ケイバーライト爆弾を盗んだ主要人物とされる男の身元は既に割れていた。しかしあまりにも簡単に判明したこと自体が怪しく、罠の可能性も危惧されていた。そして爆弾を盗まれた事件とリチャード襲撃事件のつながりも不明確であった。
チーム白鳩はアンジェ、ドロシー、ちせの3人で男の家へ潜入する。リチャード襲撃の一件もあってプリンセスベアトリスは待機となった。男の家には誰もいなかったがあらゆるところに罠が仕掛けられていた。罠だらげで手がかりがないと踏んだドロシーは撤退を決めかけたが、アンジェは本棚にあった一冊の本に注目する。その本とは王女が国内外に演説する際に読む文章に隠された暗号を解読する鍵となるものだった。本を開くと中には手紙が挟まっていた。
手紙に目を通すアンジェ、しかし次の瞬間窓から飛び込んできた男に襲われる。アンジェの戦闘力をも上回る男は、駆け付けたちせにも劣らずアンジェが見つけた手紙を奪い爆弾を爆破させて逃げ去った。
見つけた手紙を奪われたアンジェだったが、持ち前の記憶力で手紙の記載を完全に再現し暗号を解読した。そこに書かれていたのは大きくて目立つケイバーライト爆弾を舞台の大道具として運び出す計画だった。
チーム白鳩の5人は客として舞台鑑賞に訪れる。もちろん真の目的はケイバーライト爆弾と制御装置がどこに隠されているかの捜索である。予想通り、ケイバーライト爆弾は3つとも劇場の倉庫にあった。しかし奪還しようにも目立つことから共和国は舞台の全日程が終わるまで待ち、それまで監視を続けることとした。
舞台の全日程が終わる頃、監視チームの定期連絡が途絶えた。複数個所に潜伏して監視していたにもかかわらず、全てのチームが何者かによって殺されたのである。共和国は作戦を早め奪還を決行する。しかしケイバーライト爆弾は2つしかなく、1つが事前に運び出されてしまっていた。金目当てに運び出した男を問い詰めると港に運んだと白状した。そのケイバーライト爆弾はプリンセスとベアトが出席する、各国の要人を招いた船上パーティが行われる船に積まれていた。その船を爆破させる計画だったのである。
港まで車を飛ばした3人はすでに出港した船を見つけアンジェとちせがケイバーライトで船へ飛び移る。臨界時に大量の蒸気を発生させるケイバーライト爆弾はエンジン部に隠されていた。アンジェはケイバーライト爆弾の臨界を止めようとしたが、もはや人の力では止められなかった。何か策はないかと周囲を見渡したアンジェは消火用の長いホースを手に取ると再び爆弾の元へ進む。ホースの先端を爆弾へ引っかけると、もう片方を船を進める蒸気エンジンのモーターへ投げ込んだ。モーターは回転を続けながら絡まったホースをぐるぐると巻き込み、強力なパワーで爆弾を一気に引き抜き、ついにケイバーライト爆弾は停止した。
船の爆破を食い止め一件落着と城に帰還したプリンセスを待っていたのは、第一王子・エドワードが何者かに殺されたというショッキングな知らせだった。
女王もその情報を信じられずショックを受けるなか、城内に戻ってきたプリンセスが目にしたのは泣くふりをして笑みをこぼす第三王子・リチャードであった。そしてプリンセスの背後から、リチャードを狙撃しアンジェから手紙を奪った謎の男が現れる。リチャードは右手――狙撃されて動かせないはずの右腕――を、握手を求めるかのようにプリンセスへ突き出した――。


第1章の感想でも書いたけどとにかく作品全体で「音」が良い。劇場版だからと言って迫力を求めていたずらに音量を上げると音割れして微妙だったりするものだが、本作ではそのようなことがなく効果音もBGMもクリアに聞こえて心地良かった。

第三王子・リチャードは正直最初から怪しいと思っていた。メタ的には主要人物なので初登場からあっさり死ぬとは思えないし、メタ視点がなくとも優秀なスナイパーに狙われて運よく心臓を外れるとは思えなかった。この作品はそんな生ぬるい作風ではないわけだし。

予想通りだったとは言え、ラストシーンで最後に突き出した右手はお見事。実は最初から右肩も無事だったのだろう。しかしエドワードが殺されたのは意外だった。この先の展開がめっちゃ気になる。早く第3章を完成させてほしい。
ただ、どうせ暗殺するなら先にノルマンディー公では?とも思うが。ノルマンディー公とは敵対しない自信か理由でもあるのだろうか?

冒頭シーンの入り方もかなり完成度が高くて好き。徐々に臨界に近づいていくケイバーライト爆弾と、実験が成功するか船から静かに見守る関係者たち。騒がず静かに物語が幕を開けるからこそケイバーライト爆弾の威力の大きさが対比で際立つ。1本の映画の幕開けとしても緊張感が高まる魅せ方。すばらしい。

劇場版だからと派手な戦闘シーンばかりに走らないのが本作の良いところの一つで、この第2章でも「らしさ」が光っていた。迫力ある戦闘シーンは罠だらけの家に侵入した際に手紙を奪われるシーンくらいで、それも前触れなく突然襲われたから緊迫感が大きかった。
そして見つけた手紙を奪われて家が爆発炎上しても冷静に脱出して道の真ん中を堂々と歩いて帰る3人の落ち着きっぷりも面白かった。いや、敢えて道の真ん中を歩いて帰った方が敵から追撃されないという計算だったのかもしれない。

メアリー王女はおでこ広すぎ問題、キャラデザに違和感。幼いのに過度なストレスで禿げたという高度な設定か? 第二王女なのでただの脇役ではないだろうし、今後もっと深くストーリーに絡んで来るかも。

あとはこれを言っても仕方ないのだが、何か事件が起きないと話が進まないとはいえ、苦労して極秘に開発に成功したケイバーライト爆弾をあっさり3つも盗まれるの情けなさすぎでは……。まぁそれをツッコむのは野暮なんだけど。


さて、図らずもリチャードの思惑に気づいてしまったプリンセス。エドワードの死とタプルでショックを受けているはずだが、果たしてここからどう立ち振る舞うのか。
ED後には第3章鋭意制作中と表示されたが、早く続きを見たい。

 



第1章の感想はこちら

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