eスポーツをテーマに人間ドラマを描く意欲作。
(以下ネタバレあり)
敵を銃で撃つゲームは(ゲームとわかっていても)あまり好きではないが、本作はeスポーツそのものではなくむしろ人間関係の方にフォーカスしていたと思う。
加害者による無免許運転からの交通事故という不幸極まりない出来事により歩けなくなった妹を持つ主人公。その負い目を引きずっているところがとにかく重い。損害賠償がまともに支払われていない設定まで重ね合わせて大変な状況(設定)を作っている。
重ねて後先考えてない楽観的すぎる店長や、ダブルブッキングの件をいつまでも言わないユウにはドキドキというよりイライラした。
それでも戦術や自分たちの弱点を見直して強くなっていくTeam FOX ONEの姿はなかなか爽快であったし、トラウマを乗り越えて立ち上がる妹の美桜の頑張りも良いものだった。
本作最大の長所は澤野弘之作曲のスタイリッシュなOPだろう。これだけでも十分に見る(聴く)価値がある。
画づくりも良かった。例えば第6話。
「未来を選べる(若い)うちに好きな道を歩けたらいいのに」という心情を描写する際にとんぼ玉体験の「熱したガラス」を使うの上手い。ガラスが冷えて固まってしまったらもう形を変えられない。
気付けばベタかもしれないが、ぼーっと見ていると流してしまうだろう。
第6話、「未来を選べる(若い)うちに好きな道を歩けたらいいのに」という思いを描写するのにとんぼ玉体験の「熱したガラス」を使うの上手いな。時間が経って冷めてしまったらどうにもならないことを一発で描いている。 #僕らの雨いろプロトコル pic.twitter.com/MkImgsuKhH
— ロブ (@vector_AB) December 30, 2023
逆に、気になった点をいくつか。
自身もまた妹に依存していると図星を突かれた主人公が思わずムツキ君を殴るシーン。そこまではある程度リアル志向の作風だったのにこれを見て途端に現実感がなくなった。別のシーンでは運営資金だの源泉徴収だの生々しいリアリティがあっただけになおさらである。人を殴るならその後の罪悪感と反省までもう少しちゃんとやってほしかった。(軽くは描かれていたが)
妹が思わせぶりに入院案内をライターで燃やすシーンは結局そこまでの意味なかった。絶対に兄から離れたくないというヤンデレ的な依存を示したい「意図」はすごくわかるのだが、ライター(なぜ持ってる)まで使うのはその後の破滅的な展開に繋げないと肩透かしになる。
勝ち上がる条件がどういう設定なのかがよく分からなかった。
全128チームがシードなし単純トーナメントを戦う←わかる
上位12チームが決勝リーグに進む←2のべき乗じゃないけどまぁわかる
獲得したポイントの上位12チーム←は? 合計得点で決めるなら単純トーナメントじゃダメじゃね?
まぁここは本編と全然関係ないのでスルーするのが正解か。
全128チームが予選トーナメントを戦う←わかる
— ロブ (@vector_AB) December 31, 2023
上位12チームが決勝リーグに進む←2のべき乗じゃないけどまぁわかる
獲得したポイントの上位12チーム←合計得点で決めるなら単純トーナメントじゃダメじゃね #僕らの雨いろプロトコル
曲がりなりにもeスポーツがテーマで、5人での協力プレイや戦略を立てることの重要性を結構な回数描いてきたはず。それなのに、最終盤では敵チームが作戦練ってるのに主人公側は主人公の精神的な覚醒と気合いで逆転勝利した。これにはちょっとズッコケ。最後のヤマ場がそれでいいのかよ。主人公の精神的な成長でストーリーを締めないといけないから仕方ないのもよく分かるけど。
他にも「フラグを立てて回収する」というストーリー進行を考えるなら、どうも悪いフラグが過剰というか、風呂敷を余計に広げ過ぎた感じがする。
「このあと非常に大きな不幸が訪れるように見せておきながら結局大したことなかった」という展開の繰り返しだった。
ただシリーズ構成兼全話脚本の高山カツヒコは、それこそ15年くらい前から大好きな脚本家の一人なので、少し期待しすぎたのかもしれない。
僕らの雨いろプロトコル見終わった。兄妹のすれ違いやユウの身バレ、ダブルブッキング等々、胃が痛くなりそうな展開をたくさん匂わせつつギリギリ避けていくストーリーは、辛口に見せかけた甘口カレーのよう。見どころは澤野弘之作曲のOPか。 #僕らの雨いろプロトコル
— ロブ (@vector_AB) January 2, 2024