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たまには長文を

16bitセンセーション ANOTHER LAYER感想

ギャルゲー(エロゲ)や同人界隈の歴史に加えて、90年代のPC業界の様子が垣間見えた気がした。

(以下ネタバレあり)

 

原作には若木民喜みつみ美里アクアプラス)、甘露樹アクアプラス)の名前が並ぶ。若木民喜は『神のみぞ知るセカイ』の原作者として名前は覚えていたし、ギャルゲーをやらない私ですらアクアプラスの名前は知っている。

 

 

加えてアニメとしてのメインストーリーは高橋龍也が携わっている。
高橋龍也、ギャルゲ業界的には「Leafの人」という認識かもしれないが、私は
アイドルマスター
アイドルマスターシンデレラガールズ
『グリザイアシリーズ』
辺りのアニメ脚本を見て(事前知識なしに)その脚本に惹かれ、以来ずっとこの方の名前を覚えていた。

また第1話を含め前半で3回脚本を手掛けた雑破業も、私が特に好きな脚本家の一人である。


スタッフの話題はここまでにして中身にも触れたい。
実在するギャルゲ/エロゲやラノベ、アニメなんかをそのまま出してきたのがまず面白かった。権利関係の確認もしっかり取っていたとのことで感心したし、同時に古すぎて会社もなく「誰が権利者なのか分からない」ケースもあったと聞いて時の流れに哀しくなったりもした。

 


オフィス内で普通にタバコを吸っているのも時代を感じる。当時はそれが普通だったわけで、時代が違うことを極めて分かりやすくに描いている。


主人公・コノハのタイムリープによって世界線がズレていく展開も良く練られていて面白かった。過去の時間で2020年代の知識とスキルを隠さずに見せつけてしまえば、そりゃ少なからず影響も生じよう。


ただし、第8話のエコーという未来?のキャラの言動に関しては、恥ずかしながら意図がよく分からなかった。想像力がない=人間じゃない=人工知能(AI)みたいな解釈はできそうだったが、自信も確証もない。

未来から過去への干渉と全容が見えない不思議な世界観に対して、やや古いけれど『失われた未来を求めて』(2014年)を思い出していた。

 


想像力、あるいはその先の創造(作品を生み出すこと)に関しては、どこか私たち視聴者にもメッセージを語りかけてくるようだった。

 

 

それでいて最後はコノハとまもるのラブコメでシナリオをまとめ上げるからすごい。
コノハ視点だと見えにくいが、守からすればコノハなんて唐突にやってきては突然消え、数年後にまた突如現れるような存在なのに、守はまた現れるか分からないコノハを長年待ち続けたわけだ。
ギャルゲ特有の、どこか危なっかしさすら覚える恋と言えよう。


散りばめられた元ネタをどれだけ理解できたか、30代の私でも分からない。
それでも、長年業界を生きてきた歴戦の勇者たちによる夢の共演を確かに見た気がした。