change direction

たまには長文を

幼なじみが絶対に負けないラブコメ感想

ストーリー、作画ともに酷い出来だった。私が見てきた動画工房の作品の中でもワースト。酷評を通り越して「動画工房に何か会社としてトラブルがあったのか?」と心配になるレベル。

(以下ネタバレあり)

 

そもそも私は『恋姫†無双』(2008年)の作画に驚愕して以来、10年以上一貫して動画工房を強く推しており、個人的に作画の丁寧さに関しては京アニを凌ぐと思っている。(京アニの本気のカットは確かに息を飲むほどに綺麗だったりするけれど何気ない普通のシーンの背景の丁寧さまで含めたトータルで考えれば、という話)

本作を見ることにしたのも制作が動画工房だったからという理由が大きい。シリーズ構成の冨田頼子もプリチャンのローテ脚本でいつも良い脚本を書いていたし、他のアニメでも何かと名前を見かける方だったので、このスタッフ陣ならストーリー・作画ともにハイレベルな作品になると予想していた。確信していたと言っても良い。

しかしその期待は第1話の「崖のような角度の土手に座る主人公たち」から崩れ始める。配色に関してもバケツツールでとりあえず色を付けただけみたいなカットが半分以上で、教室や部屋に照明がないのも違和感のもと。なんというか画面が根本的に暗かった。

背景まで含めた作画の丁寧さどころかそもそも制作の時間が足りておらず無理やり納品したような出来だった。他の制作会社ならともかく動画工房でこんなことになるとはかなり予想外だった。
衝撃的なダンスもネットでずいぶんと話題になった・・。

悪いことは重なるもので、作画が作画なら脚本も脚本である。
最終回を見終わった後、何が面白くない原因だったのかを色々と考えた。思うに本作のストーリーが明らかに面白くない原因は、一言で言うなら「行動と精神年齢の不一致」であろう。

思考から行動、発言のそれぞれが高校生のレベルではない。いやがらせを受けたとしても相手の会社に乗り込んで言い合いになった挙句、ワインを相手の頭にぶっかけるのは流石に無理がある。そのくせ恋愛の駆け引きがどうこうと言われてもリアリティがなさ過ぎる。

逆に回想シーンでは子供の頃の会話も出てくるけれど、今度は台詞から何から子供のそれじゃなくて全然リアリティがない。子供の頃という割には達観したオッサンが言うような台詞が出てくる。小学生の子供が相手の心遣いにしみじみと感謝するなんてあるだろうか。百歩譲ってあったとしても数年後に高校生となった主人公たちの精神年齢はむしろ大幅に下がっている


そんな中で唯一褒められるところがあるとすれば、ヒロイン三人の駆け引きだろうか。幼馴染ゆえに、告白して失敗したら友達として会うのも気まずくなる状況は分かるし、かと言ってライバルに主人公を取られるのも困るという膠着状態は確かに物語の核になっている。何かのイベントの後では後日談的に「今回は誰の勝ちか」が哲彦によって解説される。
この長い解説を落ち着いてよく聞くと確かにヒロインたちの恋の駆け引きが分かるし、その様子はまさにミステリーの終盤に探偵の推理を聞いているような爽快感にも似たカタルシスがある。
しかしこの駆け引きの内幕が端的に難しいし、毎回哲彦の解説を2回か3回聞かないと理解できないのは作品として惜しい。解説を聞くと「なるほどそういうことか」と納得できるだけになおさらである。(「単にお前に読解力がないだけだろ」とお叱りを受けるかもしれないが)
もう少し作品本来の意図するところから離れない程度に分かりやすくしていれば、少なくともストーリーは面白くできたのではなかろうか。

 

耳に残るEDは良かった。