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たまには長文を

球詠感想

2020年春クール最高作品。各回2・3回ずつ見るほどハマった。
対戦相手校も含め捨てキャラのモブがほとんどおらずそれぞれに個性があり、各キャラ視点での思いが表現される展開は群像劇と言っていいだろう。若干作画が微妙だったことを除けば、スポ根と百合が絶妙なバランスで調合された私好みの面白い作品だった。

(以下ネタバレあり)

 

OP・EDの作詞作曲はかの有名な麻枝准。この情報だけでニヤリとしたのは私だけではないはず。各キャラのバッティングフォーム、ピッチングフォームも違っていて野球ファンの琴線にも触れるこだわりが感じられる。

 

物語は制服がかわいいという理由で詠深よみが新越谷高校に入学するところから始まる。新越谷高校の野球部は過去の不祥事による停部でほとんど消滅状態にあった。

咲-saki-しかりガルパンしかり、主人公が高校入学時に一度その道から離れようとするのは美少女スポ根モノの伝統的な展開だ。

停部で当時の部員はほとんどいなくなっており、チーム集めから始まるところもまたスポ根モノの王道。特に本作では過去の不祥事もあって他校からのイメージも悪くマイナスからのスタートになる点もオリジナリティがある。

ストーリーの都合上、主人公である詠深とマネージャーにして影の主人公である芳乃の描写が多くなるものの、それ以外のキャラにもしっかりとスポットライトがあたるシナリオがとても良かった。原作の良さもあるだろうが、仲間外れを作らない待田脚本がぴったりハマったのだろう。
個人的にアニメ業界で一番好きな脚本家・待田堂子さん、今回も最高の脚本だった。

ここまで筋の通ったスポーツものだと、随所に現れる百合描写が邪魔だと感じる視聴者もいるかもしれない。だが私は最初にも書いたように、少なくもなく多くもない百合描写がスポ根展開の良いアクセントになっていると思う。
詠深×珠姫よみたま芳乃×希よしのぞからの希×芳乃のぞよしすみれりょうの二遊間、息吹芳乃の姉妹百合(高校生にして手をつないで歩いてるのは濃い)、停部中二人でグラウンド整備を続けてきた理沙と怜の2年生コンビ。全部好き。

意外と豊富だったBGMも褒めるべきポイント。詠深がマエケン体操を当然のようにやっているのも面白かった。どんなに不利でも絶対に落ち込まないどころか却って燃えている鋼のメンタルは見習いたい。

 

そんな中で作画面だけがいま一つだった。愛のあるツッコミとしていくつか挙げよう。

 

制作陣も何かしらのトラブルを抱えていたようだ。作画監督が多いのは比較的よくあることだが2度に渡って演出がアランスミシーになっていた。私が見る限り演出も決して悪くなかったと思うのだが、裏で何が起こっていたのかは謎である。(アランスミシーを知らない人は調べてみよう)

とは言え、作画の粗さを吹き飛ばすくらい面白かった。この作品に出会えてよかった。