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たまには長文を

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会感想

毎回脚本が丁寧で作画や音楽の完成度の高さも噛み合って想像以上の面白さだった。全体の構成は終盤まで各キャラ一人一人にスポットライトを当てていく王道展開ながら、その回のメイン以外のキャラも細かく成長していく緻密に練られた脚本が素晴らしかった。

(以下ネタバレあり)

 

ラブライブというビッグタイトルをこれまでとは違うスタッフで制作するのは大きなプレッシャーがあっただろうに、完全に私の期待を超えていった。

スクールアイドル活動が廃校回避の「手段」だった初代と比較して、純粋に「目的」にするとこうなるってのがよく分かった

それぞれがやりたいようにスクールアイドルをやる、と聞いたとき、正直不安がよぎった。過去作のようにラブライブという名の"甲子園"で優勝するような明確な目標が打ち出せず軸がブレてしまうのではないかと思ったのである。ましてや本作のタイトルは同好会。楽しむことを主眼に置き苦しい特訓からは距離を取るユルい構成で行くのかと予想した。

結果的にはこの予想に反して、むしろ各キャラが「アイドルをやる意味」を考えながら成長していくことで物語全体に説得力を持たせることに成功した。

そして各キャラがそれぞれ違う価値観を持っていながら大枠では同じ方向を向いて活動する様子はどこか群像劇の要素があって(群像劇そのものではないだろうが)、個人的にこういうのは大好きな作風。

各キャラの成長に関して特に印象に残った具体的なポイントを二つ挙げたい。

一つは序盤の基礎練習。身体が硬く柔軟もまともにできなかったキャラたちが徐々に柔らかくなっていく描写が細かかった。ポイントは柔軟体操を繰り返して成長したことを誰も発言しないこと。集中してよく見ればだんだん身体が柔らかくなっていったのが分かる作画になっている。まぁ気づいた人も多かったことだろう。

もう一つは天王寺璃奈の成長。もちろん第6話の璃奈回だけではない。この回以外でも同好会以外の生徒と少しずつ打ち解け、璃奈ちゃんボードを使う頻度が少しずつ低くなっていった。この「少しずつ」がなんとも味わい深い。第6話以外の他キャラメイン回でもボードを使わないで会話するシーンを少しだけ挟むことで璃奈の成長も描いている。

冒頭述べたように、ある程度のキャラ数がいるコンテンツのアニメ化では序盤と終盤以外で各回一人ずつスポットライトを当てていく構成が多い。むしろ王道的構成と言っても良い。
この時、その回のメインキャラの描写にこだわりすぎて他のキャラがフェードアウトする脚本も少なくない。だからこそ本作の璃奈のように他のキャラのメイン回でも少しずつ成長していく脚本が素晴らしかったのだ。

作画も音楽も良かったけれど、一番良かったのは他ならぬ脚本だと自信をもってオススメしたい。

もちろん音楽も良かった。特に第8話で流れたしずくのSolitude Rainは好き。あとEDも。

璃奈ばかり取り上げたが、素の自分を出せずに悩む桜坂しずくやギャルっぽい派手な見た目とは裏腹に人情味があり洞察力も高い宮下愛も好き。(個人的には愛さんが一番好き)

それにしても歩夢の侑に対する思いの強さには驚いた。突然「強い百合アニメ」に変貌した。今にして思えば歩夢回は第1話だったしそれ以後なかなか取り上げられづらいポジションにいたのでインパクトを持って歩夢の内面を描きつつ侑との関係性も改めて示す脚本の技だったのだろう。

最終回。晴れの予報に反して雨が降り当初の計画が崩れてしまう。昔見た「雨やめー」で雨が止む奇跡の展開ではなく、雨が止むまで待っているのがリアル路線を印象付ける。前作へのカウンターだろうか、わざわざトラブルを持ち込まなくても十分感動的な終わり方だったと思うが、最後にもう一つ山を用意するストーリー展開が重厚な印象を際立たせる


ということでラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。作画も音楽もさることながら、何より脚本が素晴らしい期待以上の作品だった。