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たまには長文を

恋する小惑星感想

余韻がすごい。
きらら系列のアニメの中でもトップクラスの完成度だった。

(以下ネタバレあり)

 

「あの時出会った少年は実は女の子でした!」という掴みは第1話であっさり消化して中身で勝負する姿勢が伝わってきた。

可愛い女の子たちがおしゃべりするだけの平凡な展開とは一線を画し、ブラタモリよろしく地学の細かい知識を盛り込んでくるストーリーが味わい深い。
きららアニメでは珍しく(?)、登場人物たちがそれぞれ将来を見据え夢に向かって地道に努力している様子が見えるのも個人的に大好き。

本作の良いところは天文班と地質班が互いに尊重し合っているところ。徐々にお互いの分野の面白さに気づいていく展開も爽やかで心地よい。

後半の展開が実は最初からEDで示されていた仕掛けも見事。ネタバレとも伏線とも違う大胆な試みだった。「これEDじゃないか」と怒る視聴者なんてほぼいなかったのではないだろうか。私は純粋に「これEDに繋がるのか!」とすごく感心した。

周囲の大人たちがしっかりしているのも良い。あおの居候に対して思いをくみ取る親もさることながら、きら星チャレンジや各施設の関係者もちゃんとした「大人」だった。

このリアル志向はアニメ化にあたって強化されたようで、ギャグ調の原作の良さを活かしつつアニメとして成長ドラマになるよう再構成したスタッフ陣の仕事に頭が下がるばかりである。しっとりとしたOPやEDも作品の雰囲気に合っていた。

シリーズ構成は山田由香。私は『のんのんびより1期』(2013年)の時の脚本を見てから彼女の名前を憶えていて、『NEW GAME!1期』(2016年)でも何回か脚本で見かけていたが、ここにきてすごく良い仕事をしたと思う。

作画のクオリティもまたトップレベル。私は動画工房が日本一作画レベルの高い制作会社だと思っているし、今回もそれを再認識した。キャラクターだけでなく背景の丁寧さはどのシーンでもため息が漏れるほど綺麗だった。

監督の平牧大輔にも今後注目していきたい。