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たまには長文を

まちカドまぞく感想

2019年夏クールで一番好き。
ポイントは単位時間当たりの情報量の多さ。

(以下ネタバレあり)

 

全12話のうち9話分のシナリオを担当した大知慶一郎は『アイカツ!』のローテーション脚本家だったし、3話分を担当した大場小ゆり(桜井監督の妻)は『プリパラ』のローテーション脚本家。
この二人のシナリオにキャラデザ大塚舞まで揃えば、
俺のためにスタッフ集めたのか!?
と言いたくなるほどの布陣なので、ハマったのも当然と言える。総作監大塚舞の回はEDテロップを確認せずとも分かった。そして第11話と第12話を見ていて総作監大塚舞か否か最後まで悩んでいたら2人で担当する回だったときは、我ながらキモいレベルに来たなと思った。


このアニメは台詞しかり演出しかり、とにかく情報量が多かった。会話はハイテンポで止まらないし一人でもモノローグや独り言が続いて台詞が途切れない。
例えば窓際の机で会話していたシャミ子と杏里の会話に桃が突然「外から」教室の窓を開けてツッコミを入れてくる。なぜ桃が窓から入ってきたのか私たち視聴者が疑問を持つ間もなく会話はどんどん先に進んでいく。
作画面では言葉が文字として描かれるマンガ的な描写を始め、背景では常に何かが動いていた。シャミ子の長い尻尾は心情に合わせて良く動くし、杏里はテニスラケットで素振りをしながらシャミ子に話しかける。
最たるはシャミ子と桃と杏里が教室で会話していたシーン。モブキャラの女子二人が教室でかくれんぼをしていてシャミ子たちの会話中に「あー見つかった」みたいな台詞を結構な音量でかぶせてくる。
なんら隠れるような場所がない普通の教室で高校一年生の女子がかくれんぼなどするだろうか。
しかし膨大な量の情報を浴びている私たちにはそれを疑問に思う余裕はないのである。
原作がきららの4コマであることを踏まえると、これらは桜井弘明監督の作風によるものと思われる。(私が見た桜井監督作品は『会長はメイド様』(2010年)と『猫神やおよろず』(2011年)だけなので確信は持てないが)
見慣れたきらら原作アニメも料理次第でこういう味になるのかと驚かされる。今後桜井監督の作品を見る機会があったらチェックしたい。

OPにもある大量の道路標識が何か意味を持つのか気になっていたものの特に何もなかった。街角まちカドで見かける道路標識のように、まぞくは意外と身近にいるということを言いたかったのだろうか。


そしてこの作品、百合要素も匂わせる魔法少女コメディに見せかけて、実はかなりしたたかに計算されていたようにも感じる。

シャミ子はいつも桃に言い包められ、「これで勝ったと思うなよー」と捨て台詞を残す。たった1クール12話なのに、この一連の流れが様式美に見えるほどの安心感に昇華させた。

桃のキャラ設定もかなりあざとい。成績優秀で真面目に見えて家では大雑把、趣味は筋トレなのに技名はフレッシュピーチハートシャワー、表情変化が少ないクールな生活なのにプライベートではゆるキャラのたまさくらちゃんグッズを集めている。桃はあからさまにシャミ子のことが好きだし、それを悟られまいとクールに振る舞うところも含めてギャップ萌えをとことん盛り込んだあざとすぎるヒロインである。

変身シーンも手が込んでいて気合を感じたし、萌えアニメとしてパーフェクトだった。

ぜひ2期をやってほしい、もちろんこのスタッフ陣で。