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たまには長文を

劇場版PSYCHO-PASS SS第二作感想

PSYCHO-PASS劇場版三部作の二作目。青森の雪山を舞台とした一作目に対して今回は沖縄。血が多くてグロさが上がっていたが、こちらの方が「刑事モノ」らしく、救われない結末を含めて第一作より面白かった。


(以下ネタバレあり)

 


【あらすじ】
須郷は優秀なパイロットとして東南アジアの極秘軍事作戦「フットスタンプ作戦」に参加したが、敵の戦力が大きく作戦は失敗、味方のために救援物資を投下して離脱する。その際地上にいた先輩の大友は行方不明になってしまう。
3か月後、無人のドローンが国防省を襲撃する事件が発生する。捜査を進める中で浮上してきたのは行方不明の大友だった。ドローンの遠隔操作を行うためのハッキングが須郷の端末から行われていたことから事件の第一容疑者とされた須郷だったが、刑事課一係執行官・征陸は須郷の言動から彼は犯人ではないと判断する。
そんな中、2度目のドローンによる襲撃が起こる。国防省の上層部までもが死亡した事態に須郷は、大友が行方不明になったフットスタンプ作戦の存在が焦点だと気づく。大友の最後のメッセージから、ブランデーの蓋に隠されたメモリを見つけた須郷は征陸と共に国防省の機密を知る。容疑者の大友は彼が生前に残した戦闘データをインプットした人型ロボットであり、真犯人として大友の妻・が浮上。
実は、あの時須郷が味方のために投下したのは救援物資ではなく有毒ガス兵器だった(ナントカVXって言ってたな)。自覚なく大量破壊兵器を使用し尊敬していた先輩ごと殺戮した事実を突き付けられる。
燐もまたフットスタンプ作戦で夫が捨て駒として使われた事実を知り今回の犯罪を実行した。復讐の最後のステップとして自ら銃を持ち国防省に侵入したが、上官を殺害するには至らず逆に殺された。
しかしその上官も犯罪係数が高かったことからドミネーターで殺害された。

 

相変わらず「abnormalize」アレンジバージョンは良い。名曲。

50分だと起承転結が早くて、読み合いが深まらないのが残念。1クールとはいかなくとも6話くらい使ってじっくり描けばもっと面白くなりそうなのに。

ストーリーの作風はやや変化した印象。政治的な駆け引きはあるものの推理要素は薄まり、戦闘も殴り合いの肉弾戦になっている。

見終わってから冷静に振り返ってみると、日本が戦争に"協力"していたり有毒ガスの兵器を使っていたりとすごいことになっている。優秀なメンバーが有能な駒としてあっさり使い捨てられていることに哀しさを覚えるし、ドローン襲撃で省内に多数の死者が出ていることすら駆け引きに利用する上層部の心の無さに対して見ているこっちの色相が濁りそうだが、それも含めてPSYCHO-PASSらしさと言えるのかもしれない。

復讐劇って結構嫌いじゃない。犯人の燐には同情したし(同意見の人も多いはず)、国防軍の上層部もやっつけてくれと密かに応援したのも事実。ただしそうは問屋が卸さないというか、いくらかわいそうでも復讐は成功しない。

PSYCHO-PASSって長くやろうとすると難しいよな。ストーリーを作るには簡単に解決しない事件が必要で、そんな事件が起こるにはシビュラシステムが管理しきれない条件とか例外が必要になる。でもそれって結局シビュラの不完全性を拡げていくことだし……。

今回も「出島は管轄外」みたいな台詞があった気がするし、シビュラってそこまで完全じゃないというか、まだ穴が多いのかもしれない。


ところで、序盤で出た「色相美人」という単語が気になった。
この社会において、犯罪係数は確かに閾値を越えなければいいのだろうけれど数値化されてしまうのなら小さいに越したことはない。
数字が出れば競いたくなるのが人間。
色相が少しでも小さいことが優位に見られるのは想像に難くない。色相を下げる薬も普通にあるようだし、意外とこの社会の人々は薬漬けなのかもしれない。


今回みたいな泥臭い刑事モノは嫌いじゃないけれど、やっぱり100年後の世界だし科学を前面に押し出しつつ先の読めない駆け引きを見たい。
ただそれはシビュラシステムの秘密を描いてしまった以上は難しいのかもしれない。
だんだん薄まっていくPSYCHO-PASSらしさと第一作より面白かったこの第二作を踏まえて最後の第三作がどうなるのか、しっかり見届けよう。