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たまには長文を

五等分の花嫁感想

キャンプファイヤーで手を繋いでいたら結ばれるとか、倉庫に閉じ込められるとか、恋人のふりをするとか、トラブルで旅館の同じ部屋に泊まるとか、そういったありがちなテンプレ展開の中にキラリと光る演出は何度かあった。一花の鼓動の高鳴りを水彩画で表現するのは珍しい演出だった。
ただ全体的にパーツを継ぎはぎで並べたようなしっくりこない感じでなんとも惜しい作品だった。

(以下ネタバレあり)

 

成績優秀だけど貧乏な主人公が頭の悪いヒロイン達に勉強を教える構図、意外にも私が知る限り『ぼくたちは勉強ができない』と本作しかないけれど最近重なったのはトレンドだからなのだろうか。
と言ってもぼく勉のヒロイン達は苦手科目が酷いだけで得意科目も向上心もあったわけだが、こちらの五姉妹は露骨にやる気がなく構造は異なっている。

主人公と視聴者以外には見分けがつかないほど五姉妹が似ているという設定自体はよく活かされている。5人で1科目ずつ赤点を回避したり、5人全員の中間テストを足すと100点になったり、五姉妹で風太郎の指を一本ずつ握ったりと、五姉妹であることの意義がしっかり見えた。これは原作が良いのだろう。

他の姉妹になりすます展開は久しく見た記憶がなく面白かった。終盤で明かされる「五姉妹は平等でなければならない」という思い込みが結果的に彼女たち自身を縛っていたことも、物語全体の核となる重要なキーポイントだった。
高校生になり趣味嗜好が違えど、よく似た五つ子だからこその遠慮が切なかった。きっと勉強ができないのも、一人だけ成績優秀になることをどこかで遠慮していたのかもしれない。みんな一緒と言いながら一花が女優活動を隠していたり三玖が歴史好きなのを隠しているあたりにもその様子がうかがえる。

作画については評価が難しい。正直言ってクオリティが高いとは言えない。カットによってキャラの顔がバラバラで仕上げが間に合わないまま放送した感じ。
でも第4話の花火の作画が異常にクオリティ高かった。制作は手塚プロダクション。花火の作画だけ神がかっていた理由は何なのだろうか。

肝心のストーリーだが、これも終わってみれば独特だった。
三玖だけがラブコメをしていた。型にはめてみれば後半まで風太郎に恋愛感情を抱いておらず徐々に惹かれていく正統派ヒロインの一花、ツンデレの二乃、クーデレの三玖、元気っ娘の四葉、とここまではいいとして、五月の食いしん坊設定があまり活かされていなかった。原作では活かされているのか分からないが、予定されている2期では深掘りされるのだろうか。
結局のところ風太郎への好意を自覚していたのは三玖だけだった。赤面する回数も多かったし、ふくれっ面のような表情も豊かで、感情表現が乏しそうな見た目とのギャップも相俟って可愛かった。ラブコメとしては三玖がメインヒロインだった。

残念だったのは作品の世界観に対するリアリティの欠如である。ここで言うリアリティは視聴者側(現実世界)との比較ではなく作品の中におけるリアリティである。
見分けがつかないほどよく似た五姉妹なのも飛びぬけたお金持ちなのも「設定」だから受け入れられる。
一方で例えば図書室図書館で騒ぎすぎだった。図書室にいるリアリティをもっと出してほしい。普通はあんなに大騒ぎしないし会話するにしてももっと小声で話す。スタッフ陣は図書室や図書館に行ったことがないのか。その背景はハリボテか。シーンに合った演技ができない声優陣ではなかろうに。


音楽面では内田彩のEDが良かった。

プロローグとエピローグで示されたように五姉妹の誰かと結ばれることは確定している。
第二期ではバイブリーアニメーションスタジオ制作でかおり監督が指揮を執る。

アズールレーンの製作が間に合わずラスト2話を3か月延期した失敗を繰り返さず、かおり監督の元で各キャラの丁寧な描写を期待したい。