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たまには長文を

魔法科高校の劣等生 来訪者編感想

結論から言うと面白かった。意外にもアニメとしては2014年以来の2期に該当する。6年の時間を感じさせないのは2017年に放映された劇場版を見たからだろうか。
監督は小野学から吉田りさこに変わったが、第1期から関わっていた人なので良さは失われず、中本宗応による全話脚本で軸のブレない構成だった。

(以下ネタバレあり)

 

これほどのタイトルであっても徐々にインフレしていくのは避けられない運命らしい。もはや人類に達也にかなう敵はいないのだろう。次なる敵はパラサイトという幽霊みたいな存在だった。
背後で何が起こっているのかはほとんど説明されない。それでもご都合主義展開はほとんどなく裏に確かな論理的整合性があることが分かる脚本になっている。
より厳密に言うならば「論理的に整合性が取れているように見せる」のが神がかっている

それはなぜか。科学とフィクションの混ぜ方が秀逸だからである。例えば序盤で語られたブラックホールの実験。現実世界リアルでも中止を求める訴訟が起こされるなど事実とうまくリンクさせている。魔法ありの世界観なのにエネルギー保存則を敢えて持ち出してくるところから好印象なのに、さらに「系」の解釈の範囲に言及して魔法を説明しているセリフには感動した。魔法を単なる不思議な力にするのではなくて科学的に説明するのは並々ならぬ知識と論理設計が必要だろうに。
故に数々の魔法は「説得力」を帯びる。リアリティをまとって描かれるストーリーが違和感なくストンと腹に落ちてくる

比較に出すのも申し訳ないが、同時期に放送された『神様になった日』では取ってつけたような量子コンピュータが見事に空振りして痛々しかった。量子コンピュータという言葉を初めて聞いた中学生が想像で会話しているのような、若手漫才師が盛大にスベって会場がシーン……となっているのを見せられるようなキツさがあった。

つまり単に最新の科学的な単語を持ち出してきてもそれがリアリティに繋がるかどうかは脚本の書き方次第なのである。その意味で本作は相変わらず見事である。

さて、ストーリーの中身としては新キャラが登場したのはともかく雫が"退場"したのが衝撃的。一番かわいいから一定期間退場させられた説、あると思います
酔って呂律が回らないシーンは戻して何回も見た。脳がとろけそうだった。声優もすごかった。
パラサイトという掴みどころのない敵を追い詰めるにあたって達也だけでなく幹比古や美月が活躍する展開が好き。脇役が活躍するシナリオは大変良いものだ。
ほのかの達也に対する思いが意外な形で明らかになってしまったのもかわいい。そして最後に山場のおいしいところを持っていくお兄様もカッコいいし、最後の最後に全てを持っていく妹・深雪の存在感も健在で、見たいストーリーという期待の「ど真ん中」を撃ち抜かれた。