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たまには長文を

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦感想

全体通してよくまとまっていたし好きなタイプの作品ではある。

(以下ネタバレあり)

 

「自分は今までの人たちとは違う、平和のために戦う」という主張はなるほど確かに当人にとっては真っ当な主義であったとしても、傍から見たらそうは見えないのが世の常である。

なぜ戦わなければならないのかとお互い疑問に感じながらも、向こうが殺意を向けてくるから戦わざるを得ないのは現実社会も似たようなものなのかもしれない。

 

作画は安定していて文句なし。空や森などの背景も丁寧で手抜きのない完成度。何のこだわりか自動車は左ハンドルと右側通行。作画ミスが起こりそうでヒヤヒヤしながら見ていたがミスなくこの左ハンドル右側通行の世界観を貫いたのは地味ながら高く評価できる。

メインヒロインの雨宮天の声は嫌いじゃないしどこか切なさを感じさせる演技は悪くなかったが、相変わらず戦闘シーンの緊迫さにかけて緊張感がない。もっともっと演技力や表現力を鍛えてほしい(上から目線)。「頑張って台本を読んでいる感じ」が表面に出てきてしまっている。石原夏織も同様。

原作は読んでいないが本作は二つの争いが軸となっているようだ。一つは帝国と魔女の国・ネビュリス皇庁の対立。もう一つはネビュリス内部の女王争い。ちゃんと紐解いていけばさらに面白さを理解できたかもしれないがアニメだけでもちゃんと面白かった。

気になったのは中立国の扱い。中立国では戦闘はできないとか言っていたはずなのに終盤では普通に戦闘を引き起こしている。それだけ事態が悪くなった、ということなのかもしれないが見ている分には世界観がブレているようでいまひとつ頭に入ってこなかった。
いや中立国でバトルするなよ……」と突っ込んでしまった。

その戦いも殺したいにしては真剣さが感じられないし足止めするにしては攻撃が過激すぎた。
この辺アニメで表現するのが難しいのはよくわかる。戦闘はさせたいがストーリー上まだ誰も殺せない場合、どうしてもお遊びのような殺し合いになるのは仕方ない。とくに状況の説明を動いているキャラにやらせようとすると「命がけで戦っている割には解説台詞が長い」という事態に陥るし、そういう作品は山ほど見てきた。

もちろん自分の能力に絶対の自信を持っていて、相手を本当に殺すつもりはない者同士の茶番的戦闘はそれはそれで違う面白さと説得力があるのでそれはそれで良い。
本作みたいにある程度血が流れるとどちらともつかず、本当にバランス感覚の難しさがある。

量産型ラノベ原作魔法ありファンタジーの一つ。この枠から出る印象に残る部分は正直見つけられなかったが、バランスよくまとまった作品ではあったと思う。私は好き。