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たまには長文を

放課後ていぼう日誌感想

動画工房は日本で一番仕事が丁寧なアニメ制作会社である。
本作においても作画はもちろんのこと、ストーリー展開も音楽も、これ以上ないくらい最高だった。

(以下ネタバレあり)

 

エサの虫がウネウネと動く様子、釣竿が微妙に「しなる」作画、魚を捌いて調理していくシーン、細い糸を結ぶ作画等々、どこを切り取っても非常に丁寧で、アニメというより芸術作品の域に達している。

コロナ禍で無理せず放送を一時休止したのは英断だった。

今期はキツい作品が多かった中で、本作はどの回でも開始30秒で心地よさが広がって非常に癒された。


作画が良ければストーリーも良い。
手芸趣味のインドア少女が釣りを始め、徐々にのめり込んでいく過程が可愛らしかった。途中でしっかり「失敗」するのが良い。失敗しないのが平和なのではなく、苦戦して反省するからこそ次の成功が輝く
失敗しそうなのを察していながら敢えて失敗させる部長の采配もすごい。10代の行動じゃない。

釣り人が捨てた糸で野生の鳥が傷ついているとか、特定の場所で釣りをするときは料金を支払うとか、社会的なメッセージもあって穏やかな作風の土台に確固たる「根」がある印象を受けた。動画工房の真面目な性格がすごく伝わってくる部分である。

陽渚ひな夏海なつみの親の描写も素晴らしい。子供の成長を見守り大切に思っていることが伝わってくる温かさがある。日本の全小学生に見せたい。

監督は大隈孝晴。手がけた作品は多くないが本作では脚本も絵コンテもこなした。今後も注目したい。
そしてシリーズ構成は志茂文彦。この名前を見るとゼロ年代のアニオタとしては未だにCLANNADが最初に頭に浮かんでしまうがそれ以降も有名作品をいくつも手掛けている。『未確認で進行形』(2014年)、『ダンベル何キロ持てる?』(2019年)、『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』(2020年)など、毒の無い優しい作風はたくさんのファンの心を掴んできた(多分)。

楽曲も良い。OPも作中もBGMも良かったが、個人的にはEDが大好き。ジャズ調のアニソンはなかなか出会えない。EDだけでも聞く価値があるし今後もし機会があればインストverも聞いてみたい。


一切悪いところがない。
一つも文句なし。
今回も動画工房の見事な仕事を見た。