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たまには長文を

ゲーマーズ!感想

かなり面白かった。ギャグ色強めのラブコメでありながら、各キャラがすれ違い状態を打破しようと相手の思考を読み合う展開は意外にも群像劇のようで、私の好みに合う良作であった。

(以下ネタバレあり)

 

序盤は若干キツかった。容姿端麗・成績優秀・頭脳明晰・スポーツ万能で性格も良くそれでいてゲームが好きな金髪ヒロインが、ゲーム部が存在するという理由でわざわざ低偏差値の高校に進学し、その上ゲーム店で見かけたというきっかけだけで友達0人の主人公をゲーム部に誘うわけである。
こんなオタク中高生の妄想全開な痛々しい展開にどっぷり浸かれるほど私も若くない。
だがよくあるラブコメかと思った矢先、予想は良い意味で裏切られる。
主人公がゲーム部への入部を拒否するのである。その理由も「ゲームの腕を上げるために努力を重ねるのではなく楽しくゲームがしたいから」という筋の通るものであった。そしてここからかつて『生徒会の一存』を書いた葵せきなが紡ぐ、他の作品とは一味違う展開が進んでいく。

物語全体の構成はすれ違いコントをベースにギャグ調で話を膨らませつつ、各キャラが恋に落ちていくラブコメ
人付き合いの経験が乏しく異性の誘い方がぎこちないキャラたちのリアリティが抜群で、見ている私の心にも重くのしかかってきた。

主要キャラ6人の相関図がだんだんややこしくなっていくのが面白い亜玖璃と最初からカップルだったのに千秋景太に対する思いを汲み取って千秋に積極的に話しかけるようになる。するとが本当に好きなのは千秋だと誤解した亜玖璃景太に悩みを相談し、今度は景太亜玖璃接触機会が増えたことによりメインヒロインであるはずの花憐の影が薄くなっていく。これは一部分を取り出して文章にしただけだがこれでも十分にカオスな展開である。
そして複雑な人間関係に陥った(みんなが言葉足らずなのが悪いのだが)状況において、各キャラが状況を打破しようとそれぞれ戦略を考え他人がどう行動するか読み合っているのが最高に面白かった。こういう膠着状態での読み合い展開は大好き。各キャラも作者の都合で記号化された人格ではなく、きちんと生きている感じがして大変良かった。

さて、「非ゲーマー」の私にとって今作で特に印象に残ったキャラがいる。メインキャラの中で唯一ゲーマーではない亜玖璃である。
上達するために努力する花憐と楽しむことに重点を置く景太の対比がテーマの一つである中で、亜玖璃の立ち位置は私の価値観に一番近かった。
「ゲームは否定しないけど、最近のゲーム高くない?」って台詞はかなり共感した。

とってつけたようなエロ展開が少なかったのも好印象。
作中でのゲームが実在するものに限りなく近いのもすごかったし、効果音も8bit音源のようで好き。