登場人物たちの本心がなかなか見えてこないミステリアスな展開は面白かった。少女漫画や雑誌で得た付け焼刃の知識でヒロインを口説こうとする主人公は確かに痛々しい側面もあったが、現実の恋愛も結局はそんなものなのかもしれないし一周まわってリアリティが感じられた。
タイトルにもあるリベンジは、今でこそ「再挑戦」のイメージが強いが本来は「復讐」と訳される。どちらも意味にとっても物語の核になるであろう単語である。
ただ終盤からラストにかけての締め方ははっきり言って良くない。その辺を詳しく書いていこう。
(以下ネタバレあり)
原作由来の全体的な設定は良かった。かつて太っていていじめられていた政宗が当時のことを引きずっている様子や、
早見沙織演じる小十郎が男なのも小倉唯が主人公の母親役を演じているのもオタク心をくすぐる絶妙な起用だった。
寧子に関してはその動機まで含めて最後まで描かれ、動機こそ偽りだったが恋をして失恋する一連の流れには心を打たれた。
愛姫の使用人であるはずの吉乃が政宗に協力する本心は結局最後まで明確には明かされなかったが、確かな根拠があるものとしてパーツだけは散りばめられていた。
これでうまく最終回までまとめあげればマンガ原作の1クールアニメとしてスッキリと終わったことだろう。
まぁ終わらなかったわけだが。
終盤で現れた
吉乃もじゃないかと思われるかもしれない。大事なのは上に書いたようにアニメ内で全部説明されなくとも「何か根拠があるんだろうな」と視聴者に思わせることである。(むしろアニメで全部説明しろというのは無粋)
もちろんこれで原作通りなのかもしれない。私は「変にアレンジを加えるくらいなら原作を尊重してほしい」派なので、これが原作通りならまだ分かる。演技ながらもヒロインとキスをするパートまでやりたければ兼次の存在は避けて通れなかっただろう。
故に、最終回でやるとすれば蛇足と化したカラオケパートではなくてアニメとしての風呂敷を畳んでほしかった。
監督の湊未來は作画畑の方なのでストーリー面での実質的な責任者はシリーズ構成の横手美智子と思われる。
ご本人には失礼だが私はあまり良い印象がない。遡ってみると2013年の時点ですでにここまで書いている。
RDG総評。PAらしい綺麗な背景が印象的だったが、横手脚本は本当に酷いと再認識した。展開に脈絡がない。例えるなら4コマ漫画の1コマ目と4コマ目だけを抜き出して無理やりくっつけている感じ。
— ロブ (@vector_AB) September 11, 2013
あぁ、脚本横手美智子かよ。この人の脚本あんまり好きじゃない
— ロブ (@vector_AB) July 10, 2013
そういえば2017年当時本作の視聴を見送ったのもシリーズ構成が横手美智子だったからである。本作は決して悪い出来ではなく、むしろまずまず楽しめた方だと思うが、最後締まらなくて煮え切らない感想文をこうして長々書いている時点で当時の予想は的中していたわけだ。
一方半分の6話分を担当した脚本家は下山健人。初めて知ったのは『貧乏神が!』(2012年)。これは面白かった。全13話脚本を担当したので覚えている。
本心を隠して駆け引きする展開は間違いなく面白かった。
そして1クールという枠にまとめるシリーズ構成の仕事の難しさを改めて感じる作品であった。