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たまには長文を

プリパラ1stシーズン感想

名作と名高いだけあってやっぱり面白かった。
ストーリー良し、キャラ良し、音楽良しで、次はどんな話になるのかとワクワクしながら見進めた。
アニオタ歴は10年を超え、これまでに450近いタイトルを見てきた私がここまで高揚感に包まれながら見たのは久しぶり。
偶然同時期に見たプリティーリズム・レインボーライブと合わせて、私がこれだけハマる作品がまさか女児向けアニメにあったとは予想だにしなかった。

(以下ネタバレあり)

 

まず導入がうまい。

主人公・らぁらは落とし物を届けるためプリパラの世界へ足を踏み入れる。らぁらの学園では小学生のプリパラが禁止されていたにもかかわらず、人助けのためにあれよあれよと話が進んでライブデビューしてしまう。
巻き込まれる形で新しい世界に飛び込むのは主人公の特権だ。特にプリパラにおいては女の子なら誰もが夢見る(?)おしゃれなドレスを着てステージで歌って踊りたいという「憧れ」を、アイドルランクを上げるという「具体的かつ客観的かつ現実的な目標」に違和感なく変換した。

この導入がどううまいのかもう少し解説する。
ことアイドルアニメにおいてストーリーの軸となる目標の設定は意外と難しい。もちろん「トップアイドルを目指す」みたいな抽象的なテーマを掲げても全く問題ない。
他のアイドルアニメを思い出してみると、例えばアイカツアイマスでは(前面に押し出してこそいないが)その活動はお仕事、つまりビジネスの側面を持っていた。
またラブライブ1期では入学志願者を増やして廃校を阻止するためにラブライブ(スクールアイドルの甲子園)で優勝する必要があった。2期では1期で叶わなかった優勝を目標に掲げた。

対してプリパラは仮想空間で誰でもアイドルになれるテーマパーク。プリパラタウンは遊びに行くものであってお仕事ではない。そのためうまくなる必要も、レッスンを繰り返して努力する必要も他の作品群に比べれば乏しい。
現にモブキャラは必ずしも全員がひたすらレッスンに打ち込んでいるわけではなく、オシャレを楽しんだり推しのアイドルを応援したりする立場でプリパラを楽しんでいるようである。レッスン室が埋まる描写もあるにはあったけど。
この環境でトップアイドル(本作では神アイドル)を目指しても良いのだが、元が遊びなので目指す必要性やその説得力がやや弱くなる。
そんな中でらぁらは神アイドルを目指すことにしたわけだが、初めてプリパラに来た小学5年生のらぁらがいきなり神アイドルを目標に掲げるのは飛躍があり現実的ではない。
そこで出てくるのがアイドルランクである。神アイドルになるのは最終目標としても、直近で次の目的地はどこなのかこれで明確になった。活動実績に応じて上がっていく客観的なランクを一つずつ上げていくのは、実に具体的で現実的な目標だ。
「トップアイドルを目指す」みたいな抽象的なテーマだけを掲げてスタートして各キャラの成長を描いていく構成でも十分成立しただろうに、そうしなかった。むしろ具体的な軸を明確に示したのである。


さて、見事な導入を振り返ったところで次に第1クールについて書く。

第1クールはそふぃを仲間に加えることがテーマだった。
チーム結成に丸々1クール使えるから女児アニメは強い。
北条そふぃはその高い才能を注目されていた一方で、梅干し……もといレッドフラッシュがないと一人では何もできないことを引け目に感じていた。そんなそふぃに対して、素のそふぃも魅力的だとらぁらは言った。
そのままで良い――。これはそらみスマイルにとって大きな意味を持つ言葉である。なぜなら背も髪も伸びたらぁらも、金髪ショートなみれぃも、本来の姿とは違うからである。そらみスマイルはそういう3人のユニットなのだ。
作中の誰かに向けられた言葉が実は視聴者にも向けられているという構図はよくあるパターンだ。ところがこの場合においてこのセリフは、他ならぬ彼女たち自身へ強烈な意味を込めて放たれている。すごく印象に残る展開だった。

続く第2クールは大神田校長の過去についてがテーマ。
序盤から理不尽なプリパラ禁止令を課し視聴者からも嫌われていたであろう大神田校長。そこに至る経緯の重さに、考えを改めさせるにはハードルが高いことを示唆した。
そらみスマイルやドレッシングパフェが単に「認めて下さい!」と迫るだけでは説得できなさそうだった。

そしてここでキーパーソンとしてらぁらママを持ってくる展開が予想外ですごすぎた。
過去の経緯も含めて丸ごと全部一気に解決する道しかない。それをらぁらのママという見知ったキャラを使って描くのは構成の勝利という他ない。

第3クールは無敵のボーカルドール。

新キャラの出し方もうまい。唐突に出すのではなく少しずつチラ見せして存在を匂わせながら満を持して登場するインパクトにつなげている。これも1クールものではできない"技術"だ。

第3クールの終盤にして1stシーズンのクライマックス。
6人の豪華なステージに観客も呼応しドレスが輝き始める。
普通に考えれば誰がどう見てもドレスが輝いてファルルが目覚める展開なのに、そう簡単に解決させない。
「これ、もしかして失敗するのでは?」そんな不安を覚えてドキドキしながら見ていた。
――ドキドキしながら見ていた? アニオタ歴10年超えの私が――?
いや、確かに私は手に汗を握りドキドキハラハラしながら女児向けアイドルアニメを見たのだ。

この緊張があったからこそ、ファルルが目覚めるハッピーエンドに辿り着いた時の安堵感と満足感は忘れられない。


女児アニメだから関係ないと思わずに放送当時に見ればよかった。
名作と謳われる理由がよく分かった。

見て本当に良かった。