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たまには長文を

リトルウィッチアカデミア感想

アニオタになって10年。ここにきてこういうザ・スタンダードな作品を見ると落ち着く。
スタッフを見てもアニメ業界を牽引してきたレジェンドばかり。それはまるで創業何十年の老舗料亭の料理のようだった。(料亭行ったことないけど)

(以下ネタバレあり)

 この作品は大人から子供まで、それこそ小学生や幼稚園児でも楽しめると思う。それくらい全く不満がなくてよくできているなぁと感じる。それだけに感想を書くのが難しい。語る切り口が上手く見つからないからだ。

私がTRIGGERの作品を見るのはキルラキル(2013)、異能バトルは日常系のなかで(2014)に続いて3作目になる。
そのストーリー構成はオブラートに包むことなく「かなり平凡」と言い切ってしまってよいだろう。
やる気はあるけど能力のない主人公アッコが特別な才能を見出され少しずつ成長しながら七つの言の葉を集めていく。そして物語が進むにつれアッコが憧れたシャリオの過去が明らかになっていく。
魔法、学園、冒険、ファンタジー。そんな要素がバランスよく散りばめられた「アニメーション」の原点とも言えよう。

私のアニオタ歴が更にあと10年長ければ、きっとビールでも飲みながら「っかー、やっぱり爆発は手描きに限る!吉成爆発最高!」なんて言っていたのかもしれないが、残念ながらそのレベルには到達していない。
ただ、確かに「吉成爆発」で一つの単語になるだけの個性はある。特に最終回の第25話は「これが描きたいんだ!」という思いがひしひしと感じられるカットばかりだった。作画オタクはきっと永久保存版にしたに違いない。


思い返してみれば声優陣も良かった気がする。下手な声優が一人もいなかった。
良い声優はキャラに声を吹き込むことに徹するため存在感がないというのが私の持論だが、本作はまさにそういう作品だった。見ているときには気づかなかった。こうしてPCに向かって書いている今になって感じている。

 


さて、一介のアニメオタクとしてもう一つ触れておかなければならない。
脚本家・島田満の逝去である。
彼女が携わった作品のなかで私が見たものは、
ななついろ☆ドロップス(2007)、リトルバスターズ!(1期・2012、2期・2013)、そして本作である。
もっとも、ななついろドロップスなんてOPが良かったこととやたら情熱的なキスシーンがあったことくらいしか覚えていないのだが、10年以上前の作品で印象に残っているのだからやはり良い作品だったのだろう。
そしてリトルバスターズ。これは脚本が見事だったのを今でもはっきりと覚えている。リトバスという有名タイトルを完璧にアニメに落とし込んだと感動した。
本作も全体の構造こそ平凡と上で書いたが、中身は成長と友情と平和への願いとその他諸々が調和した味わい深いストーリーだった。
享年58歳というのは若い気もするが、遺作となった本作を胸に刻みたい。