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たまには長文を

ガーリッシュナンバー感想

全部見終わってみれば共感できるポイントもあって、視聴後の満足感は高い。序盤はややクセのある展開なので、切らないで付き合えるかが試される。

(以下ネタバレあり)

 

序盤、主人公烏丸千歳の自分のことを棚に上げる自信過剰な性格は正直見ていて気分の良いものではなかった。九頭という名前通りのクズプロデューサーの身勝手な態度も同様だ。

だからこそそんな千歳や九頭Pが挫折(というより自信喪失)を経験しそれを乗り越えるところにドラマがあるわけだが、終盤に入るまでは積極的に次回が気になる展開ではなかった。

「この業界はおかしい」という自虐ネタを当初から押し出してきたのは原作通りだろうからいいのだが、ファンタジーと言われながらも高い評価を受けたSHIROBAKOと比較するとどうしても「内輪ネタに終始する昼のバラエティ番組」のような印象は否めない。
原作者が自身を「(意思を明言しないせいというのもあるにせよ)身勝手なプロデューサーに振り回される被害者」としているのがよろしくない。文句を言うのに自分は完全なる安全圏に置く性格の悪さが透けて見えている。

と、否定的なことばかり書いたが千歳が自らの実力の無さを自覚するところ辺りから印象が変わってきた。
努力を放棄し自分に都合の良い言い訳を重ねてきた千歳の性格は相変わらず好きじゃなかったが、慣れない環境でそれなりにやっていた彼女が自身の無能さをはっきりと自覚し落ち込む描写は、ちょうど社会人として一年経った私と重なるものがあって見ていてなかなか辛かった。
それでも最後にやる気を取り戻して精神的に復活する千歳には図らずも共感を覚えたし、テキトーなことばかり言っていた難波社長も実は千歳の成長を待っていたという展開もかなりわざとらしいけど良かった。

万葉かずは回も面白かった。演技にこだわりたいのにアイドル的な立ち振る舞いを求められる声優業界の現状は私も好きじゃないので感情移入して見ていた。
親が有名声優と言う理由で自分を見てくれないと悩んでいた百花ももが吹っ切れて自分を取り戻したシーンも良かった。やはり脇役にスポットライトが当たる展開は良い。


原作者、渡航が関わったアニメはやはり俺の青春ラブコメはまちがっているクオリディア・コード、そして本作と、3つとも全て見たことになる。
どの作品にも共通する「ちゃんと全部見ると面白いけど見ている最中は気分が良くない」という作風はこの原作者の特徴なんだと思う。

青春ラブコメに関しては、ひねくれた性格の主人公が状況を完全に把握した上で「敢えて」嫌われ役を自ら買って出る自己犠牲が好きだった。
クオリディア・コードは、やはり性格はひねくれているものの根っこにある「世界を救いたい」という正義感が好きだった。
それらを踏まえると本作のキャラには特筆すべき要素はなかったように思われる。


良いか悪いかで言えば決して悪くはなかった。ただ好きか嫌いかで言えば好きじゃない。ガーリッシュナンバーはそんな作品だった。