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たまには長文を

響け!ユーフォニアム2感想

作中で提示される過去の事件が自分自身の経験と重なってかなりしんどかった。

(以下ネタバレあり)

 

色々な人が、それぞれ複雑な事情を抱えて生きている。そのリアリティに圧倒される。終始ピンと張り詰めた緊張感が我々を引き付ける。
粗製乱造と言われる近年のアニメ業界の現状は京アニには当てはまらない。
緻密にして繊細な作画をもってその魅力を余すことなく伝えてくる。


カッコつけた言い回しはこのくらいにして、少し私自身の経験を書いておきたい。
作中で語られる、
「部活に不満を抱いて部員が大量にやめた事件」
というのが自分の経験とそっくりで、とてもフィクションの出来事とは思えなかった。

何を隠そう私も高校時代、最初に入った部活を退部している。
しかも本作と同じように複数人で一斉に、である。

高校入学当時、私は迷わず卓球部を選択した。
中学時代に打ち込んだこともあり、強いとまで言えるかは微妙だが弱くはなかったからだ。

しかし期待とは裏腹に高校での部活は楽しいものではなかった。
毎日の練習の様子は「練習のための練習」という感じで、初心者がやるような簡単な練習ばかりだった。どう見ても上手くなる気配がなかった。
同学年の部員に私が教えようにも彼らに染み付いた悪い癖はなかなか抜けなかったし、彼らもまた積極的にそれを望んではいないようだった。(スポーツ経験者なら分かると思うけど、一度付いてしまった悪い癖を直すのはかなり難しい。)
まぁ端的に言って、つまらなかった。
しかしつまらない部活を続けることに意味を見いだせなくなっていたし、このままダラダラと時間を無駄にして大学にも合格できなかったら死ぬまで後悔するだろうなと思うようになった。
結局、真剣さが感じられない部活に見切りをつけ、私と同様の思いを抱いていた数人で一斉に退部した。

 

……さて。

「理由はどうあれやめることは逃げだ」と、作中で麗奈はそう言った。
周囲と敵対してでも信念を曲げない彼女らしい価値観だ。

他方で、一度やめたにもかかわらず状況が変わったから戻りたいという傘木希美かさきのぞみの気持ちも痛いほどよく分かる。

一貫して中にいた人(特にあすか先輩)からすればこれほど迷惑な話はないし、身勝手な主張だというのは言うまでもない。
おそらく視聴者の多くも、そう思っているだろう。

それでも、実体験としてかなり似たようなことを経験した身としては「やめた側」に同情してしまう。

退部という決断は簡単ではない。熱意があるなら猶更のことだ。
下手でやる気のない周囲に対して愛想を尽かし、上手でやる気のある自分たちが去るという矛盾は相当なものだ。

それが滝先生というカリスマ顧問の就任によって劇的に状況が変わり、これこそが自分たちの求めていた部活の在り方だと知った彼女が「戻りたい」と願うのをどうして否定できよう。

希美という不幸な脇役キャラに感情移入してしまい、ただでさえ重いストーリーが更に重く感じられた。自分と重なって見ていてつらかった。

そして同時に、彼女が最終的に復帰して活躍できたのが本当に嬉しかった。


私は本作の第一期が2015年の最高傑作だと思っている。
そしてこの第二期も期待通り、いや期待以上の出来だった。

アニメを見るようになって10年。
トーリー展開や物語の構造、作画の完成度などを意識するようになってからは「誰かに感情移入する」というよりも「全体を俯瞰して捉える」方が増えていた。
それだけに、これほど特定のキャラに感情移入して見たのが久しぶりだった。
現時点で2016年に録画した作品をまだ全部見ていないが、それでも2016年の最高傑作だと思う。そのくらい魅力的な作品だった。