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たまには長文を

SHOW BY ROCK!!# 感想

これだけ多くのキャラを登場させながら誰一人不当な扱いを受けることなく進む脚本のレベルの高さ。そして豊富な楽曲とそれを歌いきれる声優陣のレベルの高さ。
あまりにも自然にやってのけるが故に、ともすれば多くの視聴者が「良いものを見た」で終わってしまうのではないかという心配さえしてしまう。
「美酒は水に似たり」
本作を見終わってそんな言葉が頭に浮かんできた。

(以下ネタバレあり)

 


たくさんある良い点を語る前に、たった一つの残念だったポイントを書く。
それは最終回のEDテロップ。
歌詞に合わせてキャラ一人ずつキャストを紹介し始めたときはピークに達していた感動が振り切れるかと思ったのだが、信じられないことに紹介されたのは一部のキャラだけだった。
徒然なる操り霧幻庵はダル太夫だけ、クリティクリスタはロージアだけ。さらにはウワサノペタルズ(田舎の高校生四人組)は表示したのにトライクロニカは一人も出さないというよく分からん基準。
なぜこんな不公平なことをしてしまったのか。キャストは全員紹介してやれよ……。


という話はさておき、まずはキャラの多さについて。
バンドで7組。全部で30人くらい?出しておきながら誰もストーリーを回すのに都合良く使われることなく、それぞれが自我を持って行動しているのがすごかった。
正直に言えば、トライクロニカのどちらがリクでどちらがカイなのかとか(ベースがリクでドラムがカイ)、クリティクリスタのロージア以外のキャラ3人の名前とか(ツキノ・ホルミー・ジャクリン)、最終回を見終わった今日ならともかくあと数日も経てば忘れてしまうだろう。それでもどのキャラがどんな性格だったのかは印象に残っている。普通はなかなかないことだ。
脇役にも個性があり、一人ひとり丁寧に描かれる平等さが見ていて心地よかった。


トーリー展開にも非の打ち所がない。
敵であっても最後には改心して争いは丸く収まり平和が訪れる。
その世界はまさに性善説をとことん追求した理想郷。
アルカレアファクトのメンバーが密かに抱えていたすれ違いの解消や、バッドヴァージンロジックのアイレーンが闇落ちしてしまった理由と復活に至る過程、ロージアが本当の意味で心を開いたことでさらに深まったクリティクリスタの絆などなど、12話で収まったのが不思議に思えるほどの内容の濃さだった。


作画は回によってアニメーターの個性が感じられる作りだった。
瞳の描き方は回によって結構差があった。第7話の昭和風な作画にはさすがに驚いてしまったが味があって良いのかもしれない。
ネットで感想を見てみると作画が怪しいなどと言われてしまっていたが、崩れていたわけではないことは強調したい。
まぁとはいえ、部分的に省エネ作画を採用してきたようなカットも確かにあったのでこの辺は難しい。第1期の作画がものすごく安定していたというのも大きい。


群像劇のような構造、脇役が蔑ろにされない脚本、平和に収まる争い、ハイレベルな楽曲、ラスト全員で一致団結する展開と、私が個人的に好きな要素が詰まった作品だった。


最後おまけにもう一つ。
実はサンリオのホームページで会社情報の中の企業理念を読んでみるとこんな言葉が書かれている。
「まず自分から相手を信じ、尊敬し、愛すること。そして、そうした気持ちを表現すること」
満を持して萌えアニメ業界に参入してきたサンリオが描きたかった世界観は、これ以上ないくらいしっかりと描かれていた――。