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たまには長文を

BLUE REFLECTION RAY /澪感想

2クール24話見終えた達成感や満足感よりも、ようやく見終わったという開放感の方が大きいのが正直なところ。
ストーリー全体の軸は分かる。
不幸な生い立ちから将来を悲観した少女がそれでも希望を持って前を向こうというテーマ、決して悪くないし「思い」に焦点を当てて心の奥底を描いていく構成はなかなか骨のあるシナリオだった。
ただ色々と噛み合っていないのが見ていてもどかしかった。

(以下ネタバレあり)

 

ストーリー自体はかなり面白かったはずだ。
主人公・平原陽桜莉の姉である平原美弦。美弦はどう見てもラスボスの怪しさだったし、その脇にいた駒川うた自傷癖がある好戦的なキャラで作中で一番印象に残るキャラだった。ましてやたまに出てくる水崎紫乃なんてそれこそ「脇役その2」くらいの印象だった。まさか紫乃こそが真の黒幕だったなんて誰が予想できよう

問題のある家庭で育った無戸籍の山田仁菜が当初敵だったのに紆余曲折を経て仲間になる展開も好きなストーリーパターンだし、それ以外の脇役たちもそれぞれの立場と信念を持ってストーリーに絡んできた。

と、こうして振り返ってみると2クールかけただけの重厚なストーリーが展開されたように書ける。

しかし、主に作画面で噛み合っていないせいで重厚なストーリーの魅力が半減してしまったように思う。
まずなんといっても岸田メルのキャラデザが致命的に戦闘に向いてない
岸田メルのキャラデザ自体は好き。『花咲くいろは』(2011年)、『神様のメモ帳』(2011年)、『RDG レッドデータガール』(2013年)はいずれも良いキャラデザだった。
(関係ないけど本作で何回か脚本を担当した水上清資は『神様のメモ帳』でシリーズ構成を務めた縁がある)

岸田メル特有の、どこか儚さを感じるキャラクターデザインは唯一無二の価値を持っている。
ただ如何せん戦闘に向いてない。このデザインのキャラが戦闘してもお遊戯会みたいでまるで緊張感がない。声優陣も決して下手ではないものの、叫ぶ演技に感情が乗っているようにも聞こえず、ただ台本を読んでいるような雰囲気が拭いきれなかった。

カルト宗教の家系に生まれて虐待されたり、自傷行為でしか生を感じられない少女に「それでも自分の思いを大切にして生きていこう」みたいなメッセージは実際に不幸な少女に対しては厳しいのだろう。
それでも理想を掲げて前に進もうとするのは素直に良いストーリーだ。

うただけは物語のフィナーレを迎えた時点でも救われてない気もするが、自傷行為でしか生を感じられない少女を救うのは本作のメインテーマと別だから仕方ないか。


総評としては、繰り返しになるけど「いろいろと噛み合わない」という印象。テーマも良く、予想を裏切るストーリー展開も良く、キャラデザも良く、しかしそれでいて「見て良かった! 周りにもオススメしたい!」とはならないなんとももどかしい作品だった。