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たまには長文を

劇場版 ソードアート・オンライン ―オーディナル・スケール―感想

所謂総集編的な作りではなくて完全新作。
その出来栄えは見応え十分で期待以上の面白さだった。

(以下、ネタバレあり)

 

 


【前半のあらすじ】
仮想現実(VR:Virtual Reality)に代わり、拡張現実(AR:Augmented Reality)の可能性を追求した端末「オーグマー」。その専用RPGである「オーディナル・スケール」の人気が上昇する中、VRの方が好きなキリトはそれほど興味を持てずにいた。
しかし旧SAOのボスが登場し、そのキャラに倒されたSAOサバイバーが記憶障害を発症するという事件が発生する。謎のランク2位プレイヤー、エイジや、白い幽霊の存在と共に、物語が動き始める――。


劇場版らしく派手な戦闘シーンで始めるのかと思いきや、冒頭は静かに説明が続く。ARやVR、AIにディープラーニング等々、最近の情報分野のキーワードが満載で一気に引き込まれる。
これだけでも充分にリアリティを感じるのだが、他にもオーグマーを利用した健康管理であったり、ゲームクリアによる商品の割引券ゲットといった"生活臭"を匂わせることでさらにリアリティが際立っている。
今回のテーマがVRではなくARなのも効いている。全編を通して背景が綺麗なのだが、ゲーム起動時にその背景がフィールドに変換されていく作画がまた凝っている。
そしてテレビ版でも高いレベルにあった戦闘シーンは劇場版でさらに迫力ある作画に進化していた。

中盤、シリカかばってゲームオーバーになってしまったアスナが旧SAOでの記憶をなくしていく。アスナにとってそれはキリトとの出会いから将来を約束するまでの記憶に他ならない。キリトのことを忘れまいと日記をつける様子は見ていてつらかった。
確かにSAOでは「ゲームオーバー=死」という構図だった。それに比べれば部分的記憶喪失は一見緩そうに見える。
しかし実感としてつらいのは記憶喪失の方だろう。初期の認知症患者が昔のことを忘れていく恐怖もこんな感じなのだろうか。

 

 

【後半のあらすじ】
白い幽霊の正体は旧SAOで死亡した悠那ゆうなであった。悠那はオーグマーの開発者、重村教授の娘である。重村は自らが買い与えたゲームによって娘を死なせたことを後悔しており、エイジを利用して旧SAOサバイバーたちのSAOに関する記憶をスキャンし、そのデータからAIとして娘を生き返らせようとしていた。しかし悠那は他人を死なせてまで生き返ろうとは望んでおらず、SAOの100層ボスを倒して重村教授の計画を阻止するようキリトたちに頼む。キリトたちはSAOの仲間、そして再び戦うことを決意したアスナと共に100層ボスを倒し、その結果得られた剣でオーディナル・スケールのSAOボスを撃破する。100層ボスのリソースの一部で構成されていた(細かいところまで正確に覚えていないので若干違うかも)悠那は、奪った記憶を返し、消滅した――。

 

歌姫ユナはSAOサバイバーの記憶スキャンを効率よく行うために作られたAIで、白い幽霊の悠那は重村教授が復活させようとした本物の人格、という理解をしたのだがこの辺は正直少し曖昧。他の感想を待ちたい。

劇場版らしく最後は全員集合オールスターで戦う王道的展開が良かった。
今回の主犯である重村教授も、その過去を考えると責められないというか、同情してしまう。故にストーリーに深みがある。

 

 

その他思ったことをテキトーに。

劇場版だけでなくSAO全般にわたって言えることなのだが「そう遠くない将来これが実現しそう」という感じが絶妙。
劇中、ユナの正体は本当にAIなのか、実は人間なんじゃないのかという会話もあった。高度なAIは人間と見分けがつかなくなるのかもしれないが、そんな時代はもう間もなく到来する。

音楽についてはそれほど意識して見ていなかった。ネットで感想をざっと見てみたがメイン級の楽曲が5曲、その他合計で50曲近くあったらしい。すごい。

剣道部の合宿で島根に行った直葉は「ネット環境がない」みたいな事を言っていたので、情報化社会が進んだ時代設定でありながらもそういうアナログな側面を敢えて残しているのかもしれない。

絵的な露出は全くなかったのにシノンがエロい。つまり沢城の声がエロい。エロいなんて俗っぽい表現使いたくないけど、可愛いとも色っぽいともちょっとずつ違うんだよね。実際に見た人なら分かるかな?

 

 

というわけで劇場版SAO。冒頭にも書いた通り、重厚にして緻密に練られた脚本がとにかく面白かった。
しかもまだ新しい展開があるようなので、引き続き期待したい。