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たまには長文を

クロックワーク・プラネット感想

期待していた分だけ裏切られた思いが強い。
ストーリー展開も作画も演出も、XEBECが時代の変化に取り残されていてかなり苦しい。

(以下ネタバレあり)

 

ノーゲーム・ノーライフのファンである私は、本作が原作・榎宮祐ということを知って特に注目していた。
実際世界観は粗削りながらなかなか渋く、ラノベにありがちな魔術や魔法が出てこない。リューズ・アンクルの無敵チート感はあるものの一応「なんちゃって科学」に収まっている……と言えなくもない……そんなラインである。
まぁ電磁技術が建前上存在しないくせにテレビがあるのはどういう理屈なのか知らないが、ツッコむのは野暮だろう。(電波ならいいのか?)

私は「不利な状況から知恵と戦略で逆転する展開」が大好きなのだが、本作にもそういう部分があって楽しく見させてもらった。
ハッとさせられるシーンやセリフも何度かあった。記憶に残っているだけでも
マリーが京都を救ったことで逆に軍と政府の衝突を招いたシーン
「壊れて動かない歯車の音をどうやって聞けっていうんだよ?」
「一つでも歯車が壊れると動かなくなるのなら、この世界はなぜ動いている?」
等々。(一言一句正確じゃないかも)
そういう意味では良い所もそれなりにあった。


原作そのものがかなり粗削りなのだろうから、アニメでのストーリーの粗っぽさを悪くは言えまい。
ただ、突然CMに突入したり変なタイミングでEDを迎えたりと「アニメとしての」作り込みができていない。何かの間違いかと思って「えっ!?」と声が出てしまったのはここだけの話。
作画の不安定さは結局最初から最後まで整うことがなく、それどころかクライマックスの11話と12話が特に不安定という有様で、小学生向けのアニメを見ているようだった。

盛り上がるべきシーンでの演出が「歯車が噛み合って回るだけ」なのも苦しい。
マリーがその実力を発揮して修理するシーンでは腕をブンブン振り回しているだけ。
終盤でナオトとマリーが覚醒して天御柱を作り直すシーンでも、精神世界で二人仲良くダンスするだけという謎演出。
全てが歯車で構成された世界なのでこれ以上の表現は確かに難しいのかもしれないが、そこをなんとかしてこそ腕の見せどころでありアニメの存在意義ではないのか。


そんな中で救いと言えるのは音楽だった。fripSideのOPとAfter the RainのED。EDの独特な激しいピアノは世界観ともマッチしていて良かった。

主人公を演じた南條愛乃にも驚いた。あんな少年ボイスが出せるのか。OPを歌っている人間と同一人物とは気づかないだろう。

これまでに私が見たXEBECの作品はニャル子、うぽって、輪廻のラグランジェそふてにっRio RainbowGate、えむえむっかのこんである。ニャル子さんの2期なんて2013年だから大分昔なのに、当時の方がまだレベル高かった気がする。

アニメ業界が今まさに抱えている課題として、京アニ等が近年クオリティの水準を大きく上げてしまい他社が追従しきれていないということは知っている。おそらくXEBECは(大変失礼ながら)その最たる例だろう。

もうXEBECにかつての力はないのだろうか。

 

食材は良かった。
料理人の衰えが隠せない。
そんな印象が残る作品だった。