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たまには長文を

ロクでなし魔術講師と禁忌教典感想

面白かった。

面白くなさそうに思えたのは主人公が本当にロクでなしだった第1話だけで、第2話以降はずっと面白く、一気に見てしまった。
何が良かったのか、具体的に挙げていこう。

(以下ネタバレあり)

 

・主人公がカッコいい
主人公がカッコいいかどうかはラノベ原作に限らず好きになれるかどうかを左右する重要なポイント。本作の主人公は序盤のチャラいシーンでは好きになれないかと思ったけどそれ以外はカッコよかった。

・主人公は魔術が苦手だが、弱いわけではない
呪文の詠唱が遅いとか運用がヘタだとかの設定の塩梅がうまい。分かりやすいキャラ設定ありきで魔術能力をゼロにしてしまうと「とある」の上条さんはじめ前例が多く却って没個性化してしまうし、かといって弱い設定で無双するのも矛盾するだろう。

・暗記一辺倒の教育を批判、試行錯誤する必要性を説いたシーン
個人的に最も好きなシーン。演説のような長い台詞に酔った。このシーンだけ何度も再生した。学園ものでここまでしっかり「講義」する作品は珍しい。

・固有魔術と汎用魔術について語るシーン
これも好きなシーン。固有魔術の方をすごいと思うのは間違いで、長年改良されてきた汎用魔術の方が優れているというのは新鮮な価値観だった。これ以後、魔術が出てくるアニメを見るときにも意識したいポイントになった。

・戦力的に不利な状況を戦術で勝利するシーン
・脇役のクラスメイトにも活躍の場を与えるストーリー
これらの展開がある作品は大体好き。魔術を題材にしたラノベ原作アニメでここまで脇役クラスメイトにスポットライトを当てた作品ってあっただろうか。
必ずしも成績優秀者ではない平凡なクラスメイトの個性と強みを見抜いて他クラスに勝利する回は面白かった。しかも全種目勝利するのではなく、ところどころ2位とかにしてリアリティを持たせているのも良い。

・相手が詠唱中でも攻撃可能
得てして「詠唱」がある作品は「詠唱中は攻撃を受けない」という暗黙の了解があることが多い。本作では相手の詠唱中でも構わず攻撃できる。1節詠唱のように簡略化することで素早く魔術を発動させる意味もちゃんと生かされている。

・容赦なく血が流れる
これは人によって好みが分かれそうだけど、ラノベ原作アニメあるあるの「結局誰も死なない茶番戦闘」ではなかった。グロくない程度に血が流れ、主人公も負傷した。かといって死者が大量発生するほどでもなく、システィたちが生きてきた平和な世界とグレンが生き延びてきた殺し合いの世界のちょうど境界線を感じられる良いバランスだった。

 

ヒロイン・システィを演じた藤田茜は、もう少し頑張ってほしいというのが正直な感想。決して悪くはなかったけどルミアを演じた宮本侑芽が上手かったので少しだけ気になってしまった。まほいい。の主人公を演じたときよりは上手くなってると思うし、かわいい声だとは思うので今後に期待。
あと小澤亜李のハスキーボイスはいつ聞いても最高。

作画もまぁまぁ良かった。第7話の水着回だけが怪しかったのは萌えアニメ的にはどうなのかと思うけど、個人的にはこれで良かった。この作品はストーリーだけで十分勝負できると思うので手を抜くとすればサービス回の水着シーンでも構わない。

ストーリー展開も文句なし。毎回引きが上手くて一気に見てしまった。
第7話でリィエルが転入してきてから"大切な友達"になるまでがかなり短かったけどこれは展開上やむなし。
第10、11、12話でジャティスが最後えらくあっさりやられたのは若干気が抜けたけど、原作ラノベ第5巻の内容をこの3回にまとめる苦労が見えるのでこれも大変だったのだろう。
どちらも批判することではない、むしろ脚本家は頑張ったと思う(上から目線)。

 

良かったところが多くて長くなってしまったが、こうして一つずつ書いてみるとこの作品の魅力はあらゆるところで「ちょうどいいバランス」だったことなのかもしれない。重すぎず、軽すぎず、わざとらしくない。

 

タイトルにもある「禁忌経典アカシック・レコード」の単語が聞こえてきたところで最終回となったが、いわゆる量産型ラノベ原作アニメとは異なりかなり好印象な一作だった。原作の方は現時点で10巻まで出ているようなのでストック的には問題ない。是非2期を作ってほしい。