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たまには長文を

ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~感想

全体的に穏やかで温かい雰囲気の良作。見て良かった。万人にオススメできる。

(以下ネタバレあり)

 

アニメとしてアトリエシリーズに触れるのは「エスカ&ロジーのアトリエ~黄昏の空の錬金術士~」(2014年)以来、実に9年ぶり。

見ていて心地良かった理由がたくさんあるので一つずつ書いていく。

・島にやってきたアンペルとリラが、責任の取り方まで含めてしっかり指導している
最初こそライザたちへの冷たげな態度に「味方じゃないのか」とも思ったが、むしろ指導者として完璧だった。頑張ればクリアできそうな課題を出して成長を促したかと思えば、ライザの必要以上の能力に対して「自分が起こしたことの責任」までしっかり伝えていた。
事実、ライザには錬金術の才能があったらしい。しかしその力も強すぎれば周囲の人々に危害を加えかねない。だからこそ自分の行動には責任が伴うのだという展開は説得力があって思わず見入ってしまった。シリーズ通して特に大好きなシーン。


・各キャラの親が、態度とは裏腹にしっかり我が子のことを心配している
ライザの母親にせよ、アル中で問題を起こしているレントの父親にせよ、本心ではしっかり我が子のことを心配していた。親がちゃんと「親」をしている作品は印象に残る。(例えばヤマノススメとか)
両親に心配をかけまいと「竜の討伐には行かない」と言っておきながら翌朝こっそり出発するライザのことを、ドアの陰からしっかり分かっているライザの母・ミオのシーンも印象深い。

・ライザ、レント、タオ、そしてクラウディアが、それぞれの持ち味を発揮し協力して竜を倒す
文字通りこのままの意味。こういう展開は大好き。最初から最強のチート主人公が苦労もせず無双するなろう系が流行りがちな2020年代だけど、やっぱりこういう展開の方が面白い。


あと、ライザの「しきたりとかリスクとか言ってないで冒険に行こう」って姿勢は、絶賛無味乾燥な人生を送っている30代男性の私の心にグサグサ突き刺さってきた。
私に足りないのはまさにこういう心持ちなので、なんというか非常に考えさせられた。

 

ライザが普段スルーしていた島内の植物や石が実は錬金術の素材であったことに気づいていく設定も好き。それまで気づかなかっただけで、価値あるものは身の回りに溢れていたという教訓が心に沁みる。

その他、作画も良かった。
隙あらばアップでライザの太ももを描いてくる監督と絵コンテには、並々ならぬ太ももへのこだわりを感じた。
‥のはさておき、例えば何気ない会話のシーンでも、家の木材の年輪が1本ごとに描き分けられていて恐れ入った。私が見る限りコピペした風もなかったし、ひたすら描き込んでいったのだとしたら作画班は大変だったと思う。
でもその労力、私はしっかりと感じましたよ。 


あとは6拍子のOPも印象的だった。どこか不思議な感覚になる、作品の世界観ともマッチした楽曲だった。