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たまには長文を

勇者、辞めます感想

かつて世界を救った勇者の「その後」に着目して紡がれた作品。
後述する「一発ネタ」を1クール使って見事にやり切った点は高く評価したい。
評価したいのだが‥。

(以下ネタバレあり)

 

鈴木みのりのドコドコ系OPとTK(凛として時雨)作詞作曲のカッコいいED2が耳に残る良い楽曲だった。


ズバリ本作の核は「世界を救う度に強くなりすぎて死ねなくなってしまった主人公が自らの存在意義を見出すためにむしろ世界の災厄を望んでしまうようになり、それを自覚したことから自らの死を求める物語」と言えよう。
それを終盤まで明かさずかつて倒したはずの魔王軍に接近していく展開は確かに面白かった。全12話の第9話のラストで真の狙いを明らかにしてEDに突入するシーンは特に印象に残っている。

脚本担当もさることながらシリーズ構成の技が光った。
私が普段から監督だけじゃなくてシリーズ構成にも着目する背景がまさにこの辺にある。

 

話を戻して。
強すぎて死ねない勇者がかつての敵に殺してもらおうと画策する。この一発ネタのために序盤から中盤まで全然違うアニメかのように進行してきた。


毎週同じような愚痴を書き残していた。
ネットでもリアルでも頻繁に目にするビジネス啓発本のあるあるネタをドヤ顔で語る主人公が見ていて痛々しかった。たった一人で魔王軍を壊滅させた孤高の最強主人公が組織マネジメント論を語るのは本当にキツいものがある。これ社会人なら更によく分かると思う。

全話見終わった今となってはこれらも意味のあるストーリーだったと分かる。
主人公が死んだあとも魔王軍がうまくやっていけるように組織マネジメント論を各キャラに説いて回ったのだから、主人公の行動は至極当然のものであった。だから全話見れば全部綺麗に繋がるのだが、逆に全話見るまでは「孤高の一匹狼が組織論を語りまくる」という痛々しい展開が続いてしまう。

 

 

主人公の思考が代理ミュンヒハウゼン症候群にそのまま該当するのかは微妙。違っても責任は取れない。ただこういう前提で原作も作られたのだと思われる。


最終評価としてはまぁ満足。
1クールの使い方はうまかったし、主人公の真の狙いが明らかになってそれまでのストーリーが一気に「一本の線で繋がる」瞬間の気持ちよさは確かにあった。
ただそこまで我慢できるだろうか。誰もがどこかで目にするビジネス啓発ネタを語る主人公は本当に見ていて痛かった。(何度もしつこくて悪いけど本当にその印象しかない)