change direction

たまには長文を

賢者の弟子を名乗る賢者感想

ゲームの世界に転生し味覚や嗅覚も感じるようになり、そしてログアウトできないというどこかで見た設定に「うーん……」と思いながらも良さげなキャラデザに期待して全話見たわけだが、結論としてはイマイチだった。
ファンとスタッフには申し訳ないけれどあまり褒めるところがなかった。

 

(以下ネタバレあり)

 

まず擁護しておくと、設定自体はありきたりでも構わない。作風にも設定にも流行り廃りがあるし、設定が他のどの作品とも被らないなんてありえない。
設定が平凡でも大事なのは中身、それは私も分かっている。

と、擁護が済んだところで結論から行きたい。
結論としては、設定が全然活きていなかった。

・なぜゲーム世界に転生したのか
・なぜ渋いオッサン姿から美少女姿になったのか(※原作側には設定あり)
・なぜNPCに人格が宿ったのか
・なぜ30年後の世界なのか
ゲーム世界での目的は何なのか、そもそもあるのか

このあたりの設定がせめて一つでも深堀りされればまだ見ごたえもあっただろうが、残念ながら特に描かれず。

 


転生設定がここまで物語に絡んでこない作品は珍しい。原作側でいつか繋がるのかもしれないし、もしそうだとすればアニメ側を悪くは言えないが、だとしてもミラの中身が相当なオッサンで、転生に際して30年の月日が経っていることがどこにも活かされていないのは非常に違和感がある。
しかもミラは召喚術士なので戦闘するにしても本人が戦うわけではないし、その戦闘もミラの優秀さを示すために苦戦もせず一方的に勝つので見ていて盛り上がらない。

まぁ細かいところを大胆に無視できるのもなろう系の特徴なので上の4点は描かれなくても特に文句はない。
一番残念だったのは物語全体のテーマが見えなかったこと。
彼らはこのゲーム世界で何がしたいのか。この手の作品なら、
・なんとかしてログアウトする方法を見つけて現実世界に帰りたい
・ラスボス的な敵を倒して世界を救いたい
といった作品全体のテーマがあるはずなのに、本作でそういったシーンはなかった。

その代わりに物語の進行はソロモンの指示による「お遣い」によって進められる。
ソロモンの半強制的なお願いでミラが各地に出かけ、テキトーに敵を倒したり問題を解決して帰ってくる。1クールずっとそんな調子だった。

一体私たち視聴者は何を見せられているのだろう。

 

さらによく分からないのは原作の小説が16巻まで続いていることだ。後追いの漫画版も9巻まで出ているようだ。つまり原作はかなりの人気があるのだろう。だとすればアニメスタッフが外れだったか?

ということで賢者の弟子を名乗る賢者、毒のない作風でストレスなく全話見たものの全体的に何がしたいのか全然見えない不可解な作品だった。