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たまには長文を

スローループ感想

久しぶりのきららアニメ。
再婚によってできた新しい家族に戸惑いながらもじっくりと時間をかけて距離を近づけていく様子が「釣り」になぞらえて描かれているようで、その丁寧な作画と脚本に心奪われる。

(以下ネタバレあり)

 

きらら原作にしては設定が重い。
ひよりは父を病気で、小春は母を弟を交通事故で亡くしており、親同士が再婚するところから物語が幕を開ける。
突然できた同い年の家族に遠慮するのは無理もない。拒絶こそしないもののどこかよそよそしいやり取りがリアルで、心優しいからこその遠慮が見ているこちらの心に響く。
この重い設定に「釣り」という題材が非常に効果的に光る。
釣りはいつも必ず釣れるわけでもないし、釣れるまでルアーや場所を変えながら試行錯誤する。最終話で恋が解説したように同じ場所でも季節や時間によって状況が異なるわけで、大自然を相手にいろいろ試しながら魚を狙う様子が、まさに時間をかけて新しい家族に心開く描写とリンクする。
脚本はシリーズ構成・山田由香と大知慶一郎の二人体制。特に山田由香脚本回はいつも心地よかった。重い設定から逃げずに、されども重苦しい雰囲気は出さずテンポよく楽しい会話を繋いでいくバランスの良いストーリーが楽しかった。

作画も丁寧だった。
自然の木々や川、釣竿が揺れたりリールを巻いたりする細かい動作まで綺麗だった。
原作側はゆるキャン△に配慮して題材をキャンプではなく釣りにしたようだが、釣りを題材にしたアニメと言えば2020年に放送された『放課後ていぼう日誌』が記憶に新しい。

放課後ていぼう日誌感想 - change direction

こちらは動画工房制作の作品で、釣竿が「しなる」作画などかなり凝っていて、本作がこれを超えるのは難しいと思っていた。
それでも水の作画を中心にまったく見劣りせず甲乙つけがたいほど完成度が高かった。

その他、恋や二葉と藍子、一花と楓のコンビなど脇役もかわいい。このあたりは安心と信頼のきらら原作。
第9話だけストーリーに合わせて別ver.のEDを採用したのもポイント。

敢えて作った重い設定を見事に活かした良作だった。