作画も脚本も高いレベルでまとまった良作。正統派ラブコメ。
(以下ネタバレあり)
第1話を見る前は「派手なギャルが実はオタクでした~」みたいなオタク受けを狙ったよくある設定かと思っていた。それでも見ることにしたのはシリーズ構成・脚本に冨田頼子の名前を見つけたからに他ならない。プリチャンのローテ脚本家の一人としていつも良いストーリーを書いていたので名前を覚えた。結果的に冨田頼子全話脚本だったわけだが、期待以上の出来栄えだった。
具体的には、時間の使い方がうまい。キャラの心理描写を繊細に描くときはたっぷり時間を取ってゆったりと流す。逆にコミカルに進めるシーンではテンポよくどんどん進んでいく。例えば記憶に新しい最終回の第12話だけでも、
・夏休みの宿題に数学があったらヤバかった→数学もある
・ホラー映画だけど話題作だから大して怖くないでしょ→怖い
・一瞬一瞬♪と言いながらプールに足だけつける→落ちる
というように、フラグを作って即座に回収する「即堕ち2コマ」のような展開を次ぎ込んでくる。こうしたスピード感のある展開はかゆい所に手が届く気持ちよさというか、卓球のスーパーラリーを見ているのに似た爽快感があった。
この気持ちよさや爽快感は決してストーリー展開が良かったからだけではないだろう。引っ込み思案で、いじめられてこそいないもののクラスメイトからもいいように使われている生真面目な主人公、派手な見た目とは裏腹に趣味のコスプレや周囲の人たちに対して誠実で、夏休みの宿題も主人公のを移したりせず真面目に取り組む喜多川海夢、男が苦手なのに主人公に衣装づくりを頼み込む
作画面もクオリティが高かった。コスプレシーンや着替えのシーンでは作画班の気合が感じられた。ギャグシーンではコミックスからそのまま持ってきたような一枚絵を積極的に活用した。こういう演出は過剰に使用するとアニメらしさがなくなってしまうが、そのあたりのバランスもいい塩梅だった。
時折見せるかなり凝ったカットも印象に残っている。ダイナミックなアクションがある作品ではないが、むしろだからこそ大胆な構図にチャレンジできたのかもしれない。
特に第8話は印象的。
第8話の作画、これまでと全然違うけどなんだこれすごい。細かい動作が多いし歩き方も特徴的だし線が太いし色が少ない。それでいてクオリティはむしろこれまでより高い。絵コンテ・演出:川上雄介、作監:小林恵祐、総作監:中村真由美。誰の仕事? #着せ恋
— ロブ (@vector_AB) March 6, 2022
ということで予想以上の良作だった。第1話時点ではまさか全話冨田頼子脚本だとは思っていなかったが、何気なく書き残した冨田頼子脚本への言及が我ながらドンピシャで当たっていた(自画自賛)。
その着せ替え人形は恋をする見始める。地の果てまで冨田頼子脚本を信じろ。とりあえずこのヒロインは主人公とそこそこに仲良くなったあとあっさり彼氏と結婚して遠いところに引っ越してほしい #着せ恋
— ロブ (@vector_AB) January 24, 2022
その着せ替え人形は恋をする見終わった。見た目の設定に反して正統派ラブコメだった。時間を取った丁寧な心理描写と、上げて落とすテンポよいギャグ展開はさすが全話冨田頼子脚本。作画は綺麗なところとコミカルに見せるところを使い分けつつ、時に凝ったカットもあって見ごたえがあった。良作 #着せ恋
— ロブ (@vector_AB) April 3, 2022