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たまには長文を

アニメ・スーパーカブの法令違反シーンへの批判に関して

結論を先に書いておくと、私の考えは次の通り。
・「違法だ」という書き込みのほとんどはボケに対するツッコミのようなもの
・作品そのものに対する本気のクレームではないはず
・もちろんアニメと現実を混同しているわけでもない
・そんな書き込みに対して「アニメと現実を混同するな」と批判しても噛み合わない

そんなわけで下に書く二つのどちらの立場でもない。では誰が悪いのかという話だけど、悪いのはネットメディアだと思う。

 

 

アニメ『スーパーカブ』第6話において、主人公の子熊がクラスメイトの礼子とともに原付の二人乗りをする。子熊は二輪免許を取得して1年経過しておらず、これは法律に違反している。

この描写に端を発した論争がネットニュースで取り上げられたことで話題になった。

主張の一つは前述のとおり「違法だ」と指摘するもの。もう一つはこの指摘に対して「アニメと現実をごっちゃにするな」というもの。
特に後者はお笑いコンビ・ハライチ岩井氏の
>「アニメ内の原付二種の2人乗りが、免許取得1年以内で違反ではないかと指摘されてるけど、そういう人はルパン三世観て『窃盗は犯罪行為だから放送するな!』ってクレーム入れ続けてんのかな」
というツイートも加わり、同調するコメントが多数寄せられたという。

ちなみに些細な法令違反描写も許されない風潮は何もアニメ界に限った話ではない。テレビドラマでも人を殺した犯人が車で逃げる際にシートベルトをしなければならずリアリティが落ちているという。(人を殺して大急ぎで逃げたい犯人が冷静にシートベルトしてから発進するか?って話)

私がスーパーカブ第6話を見たのはネット上で騒がれる前だったが、二人乗りのシーンは確かに私も気になった。実際、再生を一時停止して二人乗りをしても良い条件を検索して調べた。
たまたま当時ツイッターには書かなかったが、私も「違法だ」と呟いていたかもしれない。

でもそれって、鬼の首を取ったように、あるいは重箱の隅をつつくようにドヤ顔で指摘したいのではなくて、アニメ感想の一つとして「厳密には違法だよねw」と軽くツッコミたいだけなのである。

この温度感の違い、ツイッターという特性が事態をややこしくしている。軽いツッコミをクレームだと捉えて批判しても噛み合わない。

「違法だ」と書き込んだ人の中で本当に心の底から「違法だ!!不適切だ!!許されない!」と思って書いた人は全体の何%いたのだろうか。そんな人1%もいなかったんじゃないの?
(※本作『スーパーカブ』はホンダの実在するバイクをかなりのリアリティを持って再現しているわけだし、(カブに入れ込む女子高生というそもそもの設定を除けば)ストーリー展開もリアル寄りなので、実在する方のスーパーカブのイメージダウンを心配した人はいただろうが。ちなみに私もその一人である。)

故に私は後者の「アニメと現実を混同するな」という指摘にも賛同しかねる。
アニメと現実は違う。そんなことは当然分かっている。分かっていて(楽しく)やっているツッコミを拡大解釈するなと言いたくなる。

ルパン三世に限らず、例えばこち亀両さんだって毎回のように違法行為を働いているだろう。こち亀に対して「警察官が法律を破るな」と指摘したとして、それは作品そのものに対するガチのクレームではなく、アニメ感想の一つとしての軽いツッコミに過ぎない。

なんなら「違法だ」と書き込んだネットユーザーたちに聞いて回ればよいと思う。
「あなたはアニメと現実を混同していますか?」と。
しかし多くの人はこう答えるだろう、
「いいえ、私はアニメと現実の区別がついていますよ」と。


つまるところ話が噛み合っていないのでこの論争は不毛だと思う。ただしひとつ指摘しておきたいのは、「正しさ」を振りかざしているのはむしろ後者ではないかということである。

今はネット上で気軽にアニメの感想を共有できる時代。
神脚本、神作画があれば「すごい!」って書きたいし、ありえない展開があれば「ありえねー」って書きたい。聞くに堪えない棒読み声優の演技には「棒声優がひどい」と書くだろうし、リアル路線のストーリーでも違法行為が描かれれば「違法じゃん」って書くだろう。そんなツッコミまで非難されるのは御免である。


多くの人は現実とフィクションの違いを分かっていて楽しんでいるんだから、一方的に「現実とフィクションを混同した」ことにして騒がないでもらいたい。
その意味で今回の件に悪者がいるとすればそれは前者でも後者でもなく、真剣に書いてない書き込みを大きな問題であるかのように取り上げたネットメディアであろう。

 

最後に。第7話も面白かったです。