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たまには長文を

ゆるキャン△SEASON2感想

作品全体で、対比とバランスの取り方へのこだわりがすごかった。

(以下ネタバレあり)

 

OPでリンのスマホに映る写真が毎回違うことに気付いたのは中盤になってからだった。OP映像を毎回変えるのは手間がかかるだろうに、こういう細部へのこだわりも見逃せない。
私はOPもEDもスタッフとかを確認したくてついつい文字テロップを読んでしまいがちなので、もっと映像をしっかり見ないとダメだと反省した。アニメに対する真剣さが足りなかった。

ゆるキャン△の良いところとして真っ先に思い付くのは彼女たちの人間関係の「距離感」だろう。誘いを断るシーンが多いのに、断ったとて彼女たちの関係が悪くなるわけではない。

これは第1期を見終わったときの感想。

そしてその印象は2期も健在。

 

さて本題。
ゆるキャン△の脚本の緻密な作り込みには本当に驚かされた。特に対比とバランスの取り方へのこだわりがすごい。

中盤ではなでしこがソロキャンデビューする。1期より成長したからといえばそれまでかもしれないが、キャンプのノウハウに関しては受け身だったなでしこがついにソロキャンすることになって1期との対比が際立つ。
そのなでしこを送り出すリンは「事前の下調べの大切さ」を説いていたというのに、なでしこが出発するや、突発でソロキャンに出る。人にアレだけ言っといて……と思うなかれ。なでしこがソロキャンデビューしたことでリンに近づいたのかと思わせて、やはりそこには「経験の差」が存在するというこれも美しい対比になっている。

 

その後なでしこが無事にソロキャンできているかどうか気になりすぎて桜姉さんもリンも様子を見に来てしまう。これでなでしこが愛されているのが良くわかるしなでしこに気づかれないように隠れるのも良いストーリー展開だった。会ってしまったらソロキャンにならないし、最後まで一人で過ごすように尊重して見守っているところがまた見ていて心地良い。
そしてこれがまさか最終話の伏線になっているとは思わなかった。


終盤はじっくり4話かけて伊豆キャンが描かれる。
これには恵那も参加する。いつも一緒にいないことに人間関係のリアリティが~~とは言ったが、満を持して一緒に行くところにこそ、それまでの人間関係から距離が縮まったことが表現されている。
そしてそんな状況でも一人「原付で行きたい」と言い出すリン。相変わらずブレない。単独行動を良しとするほかのメンバーの温かさも良い。
(ちなみにメタ的には2班に分かれての行動だと道中のシーンを二つに分けられるのでアニメ作りにも良かったことだろう。)

 

料理が当番制なのもよい。特定の誰かが働いたり楽しみを味わうだけになったりせずお互いに何かをする構図がとてもバランスよくまとまっていて好き。以前お世話になった酒屋にお礼に行く展開も、人としてしっかり筋を通していて気持ちが晴れやかになる。
行きで寝ていたなでしこが帰りは一人起きていたのもバランスを取るためだろう。行きも帰りも寝ていたってなんら違和感のない自然な展開だっただろうに、そこまでして徹底してバランスを取る脚本に驚かされた。

 

そして最終日の夜。原付ゆえに遅れて帰ってきたリンを、先に帰っていたなでしこがわざわざもう一度外出して出迎える。
もちろんこれだけでも心温まる展開である。しかしこの展開は二つの大きな要素が含まれている。
第一は、中盤でリンがなでしこに抱いていた「一人で大丈夫だろうか」という不安の再現である。「わざわざ待っていなくても」とリンは言ったが、リンもまたソロキャン中のなでしこを見に行ったわけで、実に見事な対比関係が描かれている。
とはいえこれは台詞にもあったので全員が気づいたところだろう。

第二は、第2期第1話との対比である。これがあまりに緻密で、これに気づいたときはシビれた。気づいた人は気づいただろうが、台詞などで明言されていないので気づかなかった人も多いだろう。
第2期第1話のラストは、早朝ソロキャンに出かけるリンをなでしこが送り出すシーンだった。それが最終話のラストでなでしこがリンを出迎えるのである。

 

ある意味狂気さえ感じる徹底したバランスの取り方である。そこまでするか!?と思った。
最終話ラストのシーンはそれだけでも十分良いシーンなのに、中盤第8話との対比になっているだけでなく第1話との対比にもなっていたのであった。

ここまで緻密で丁寧に紡がれた脚本はそうそうおがめない。文句なしに2021年冬クールの最高作品だったし、まだ冬クールだけど2021年最高作品かもしれない。それだけすばらしい作品だった。