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たまには長文を

プリティーリズム・レインボーライブ感想

全51話。胸が絞めつけられ心がえぐられるような展開の先に最高の感動が待っていた。

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YouTubeでの『プリパラ』無料配信をきっかけに『プリティーリズム・レインボーライブ』が無料公開されているのを偶然見つけ、なんとなく見てみることにした。

本作のメインキャラクターは7人。異世界から来た妖精的な存在のりんねを別枠と考えれば6人のヒロインがいる構成。その中に家族関係がうまくいっていないキャラが4人もいるから驚く。
その「うまくいってなさ」がリアルで、見ているのもつらかった。
実家の煎餅屋を継ぐことを強制されパティシエになる夢を認めてもらえないあん。かつてギタリストであったが現在は演奏しなくなってしまった父親を持ついと。常に1番になることを強いられてきたべる。高圧的な父親とそれに委縮する母親のもとで本心を隠すようになってしまったわかな
絶妙なのはどの家庭の親も子どものことを真剣に考えていることだ。なんでも自分の娘を一番にしたいべるの母親も、家族は一緒にいるべきと転勤に合わせて何度も引越すわかなの父親も、程度がおかしいから歪んで見えるが子どもの幸せを真剣に考えてはいる。
故に私たち視聴者は彼女たちの親を一方的に悪役と見做せず、ギスギスした心のすれ違いをやり場のない哀しみを抱えながら見続けることになる。
この構図はなる、あん、いとのプリズムストーン側と、べる、わかな、おとはのエーデルローズ側の対立にも当てはまる。半ば成り行きでプリズムショーを始め、楽しみたいだけで続けているなるたちに対してべるたちは高飛車な態度を取る。しかしその裏には彼女たちの不断の努力と自負がありやはり嫌いになれない。
「主人公VS敵」という安直な二項対立にせず、どのキャラにも一人一人背景があることをしっかり描いているから奥が深くてストーリーが濃い。

ストーリー展開と言えば、全体的な構成も大胆でうまい。エーデルローズから追い出されたおとはがプリズムストーンで働き始める展開は大好き。ライバルが味方になる展開は熱い。。そして常に周りに遠慮し口をつぐんできたおとはがいととのふれあいを経て成長し自己主張するようになってエーデルローズに戻ったのは特に印象深い。

わかなにも共感を覚えた。わかなは転校を繰り返す中で人間関係の構築に見切りをつけ、ピエロを演じることで悲しまないように生きてきた。
私も小学生の頃に転校を経験している。年度途中での転校は全員が同じ条件の入学やクラス替えとは異なり、すでに固まった人間関係の中で居場所を作らなければならなかった。
この経験から一定の社交性は身に付いたし、初対面の相手ともすぐに打ち解けられるようになったのは社会人となった今でも自分と強みと自負するが、一方で人間関係を深めようとは思わなく/思えなくなった。
人間関係は広く浅く。そんな"習性"が身についた私にとってわかなの内面はよくわかる。
だからこそ、失敗を恐れチャレンジすることを避けていたわかなが自分の殻を破り果敢に挑戦したシーンは特に感動した。

そんななか、私が一番好きになったのは蓮城寺べるである。
プライドが高く、なるたちに明確に敵意を向け、握手を拒み、横暴な態度を取る彼女の印象は完全に悪役であった。
その後母親に対して「私は操り人形じゃない」と決別し、彼女本来の優しさを取り戻したべるの成長は本当に感動的で、終盤なるのために涙を流す姿には貰い泣きしそうになった。
なるたちの修学旅行中にプリズムストーンのサポートに入る展開もさることながら、売り上げに対して経費を使い過ぎた「失敗」を素直に受け入れ感謝の意を示す場面はシリーズ通して隠れた名シーンだと思う。

1クールで終わらず長期的に成長を描けるからなんだろうけど、各キャラがしっかり「失敗」するから良い。
大勢の観客を前に委縮して歌えなくなったなる。できもしないプリズムライブを本番でやろうとして失態を晒すべる。見ているのもつらくなるこうした失敗はもちろんその後の成長の布石。最終盤のわかなの失敗は、前述の通りそれ自体がわかなの成長であり、次に7連続ジャンプを成し遂げるべるのすごさを引き立てる見事な展開だった。

曲も良かった。なるとべるの「Little Wing & Beautiful Pride」、いとの「BT37.5」、いととおとはの「ALIVE」は特に好き。どこか懐かしい90年代後半のサウンドって感じがした。


「なんとかなるなる、ハピなる」が口癖のなるが、なんとかなるではなく「なんとかする」王道の成長劇でありながら、周りのヒロイン達もそれぞれ自分自身に真正面から向き合いしっかり成長する本当に見事なストーリー展開だった。


またいつか、もう一度最初から見たい。