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たまには長文を

劇場版Fate/kaleid linerプリズマ☆イリヤ雪下の誓い感想

なるほど確かにこれはプリズマイリヤ/Zeroであり、これまで明かされてこなかった美遊の過去を語る前日譚として本格的なストーリーとなっていた。映画のためだけの単なる番外編ではない。

(以下ネタバレあり)

 

【あらすじ】
美遊が生まれた世界線。
彼女は人のあらゆる願いを無差別に叶える神稚児(かみちご)であった。第四次聖杯戦争の際切嗣に引き取られ、切嗣の死後も含め5年間士郎と平穏に暮らしてきた。
ずっと士郎の家の中で暮らしてきた美遊に外の世界を見せると決めた士郎が、海を見てみたいという美遊の願いを保留してまず連れてきたのは、彼女の本来の家の跡だった。
しかしそこで平穏な日常は唐突に終わりを告げる。かねてから美遊を探していたジュリアンにさらわれ、聖杯戦争の器にされてしまう。
その後士郎は美遊を探す日々を送っていたが、第五次聖杯戦争の開始とともに桜が殺されてしまった。士郎は偽りのアーチャーのカードで英霊化し参戦。第五次聖杯戦争を勝ち抜き、美遊に幸せになってほしいという願いを託し別の世界、すなわちイリヤたちの世界へ美遊を送り込んだ。
(映画の公式HPに詳しいイントロダクションがあるのでそちらを見た方が確実です。)

 

見終わっての率直な感想は、声優陣の演技力が高かったなぁということ。特に神谷浩史の演技力は突出していた。今回この役を演じるだけで寿命が一年くらい縮んだんじゃないかと思うほど叫ぶ台詞の連続で、小山力也中田譲治がいい感じに渋い声を当てていることもあってかなり目立っていた。

ストーリー。前日譚として描くべき要所を確実に抑えつつ、それでいて詰め込んだように見えないのは展開のスピードがちょうど良かったからだと思う。「多くを救うために一人を犠牲にすることは正義か」という(どこぞの倫理問題のような)課題に対して是とした切嗣と、当初はそれに賛同していながら迷い葛藤する士郎の描写は本編同様に重かった。「間違い続けた俺だから、多分この選択も間違っているのかもしれない」という台詞も強烈に私の心に突き刺さった。
エインズワースというかジュリアンは敵になるわけだけど、彼らは彼らなりに「人類の存続」を真剣に願っているのでますます難しい。ジュリアン側にも余裕で感情移入できる。

その一方で作画はというと、迫力という観点では「普通」だった。TV版第一期や第二期で見られた画面全体をうまく利用したダイナミックな戦闘シーンや、ufo版に引けを取らない凝りに凝ったエフェクトはほとんどなかった。まぁ凝った作画が少なくなり無難な作画にまとまってしまったのはTV版第三期からの傾向なのでそれが悪いとは言わないが、せっかくの劇場版なんだし"もう少し"を期待してしまう。なにせかつてそれができていたのだから・・。
迫力は普通でも、魅せ方は相変わらず上手かった。瞳のハイライト使い方、美遊を可愛く見せる構図、土蔵に差し込む月明かり、星空etc。ネットで感想を探してみると「美遊がかわいい」という声が多いのも納得。


イリヤの出番はほとんどなかった。最後に少し台詞があった程度。それがなければ本当に出演しなかったかもしれない。しかし見れば分かるがそれは仕方のないことだ。この映画の舞台は美遊がいた世界であり、イリヤがいる世界ではないからだ。

全体としてはプリズマイリヤっぽいというよりFateっぽいと言えよう。
切嗣の死は半ば決まっているので仕方ないにせよ、美遊を失い桜が殺され心を失っていく士郎が美遊を助けるために戦うことを選択し戦争に参戦していく流れはまさに主人公だった。

 

というわけで劇場版プリズマイリヤ。劇場版らしいダイナミックさは控えめだが、ストーリーも作画も文句なしの出来。特に魅せ方については流石大沼監督と言うべき技が光っていた。プリヤファン、Fateファンを問わずFateを知っている人ならぜひ見てほしい。

(上映二日目にしては客が少なかった・・。打ち上げ花火の方に客を取られたか?)