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たまには長文を

劇場版ガールズ&パンツァー最終章第4話感想

第4話。手に汗握る心理戦というよりかはアクションに寄せた回だった。それでもチームプレーの面白さが存分に引き出されていて期待通りの完成度だった。

(以下ネタバレあり)

 

【あらすじ】
継続高校の狙撃手によって西住みほが乗るあんこうチームが走行不能となってしまった。狙撃手の位置も分からないまま、最初に隊長を失ってしまった大洗はカメさん生徒会チームが指揮を執る。慌てる河嶋桃とは対照的に角谷杏は的確に指示を出す。小山の頂上に集まった大洗は周囲を継続に取り囲まれ、防戦を強いられる。逃げ道がなく絶体絶命ななか、地図からダムの通路があることに気づいた大洗は戦車を駆使して穴を掘り始める。果たして真下にはダムの通路があり逃げ道を発見した。逃げ道の存在に気付かれないように1台ずつ穴に潜っていく大洗に対して、継続高校も大洗からの反撃が徐々に少なくなっていく違和感を抱く。そして継続高校もまた地図からダム通路の存在に気付き。通路の出口に2台の戦車を向かわせる。小山の頂上では四方から囲まれたカメさんチームが最後に一矢報いて走行不能になる。
通路の出口では継続高校の2台が待ち構えていた。それでも通路内で戦車を繋いで加速した大洗は煙幕も駆使して1台もやられずに強行突破に成功する。
ひとまず危機を脱した大洗であったが、生徒会長の杏を失いまたしてもリーダー不在となってしまう。そんななか次なる隊長として決まったのはウサギさん1年生チーム車長澤梓であった。梓はここから二手に分かれることを指示する。この作戦は観客席から戦況を見守るみほが思う作戦と一緒であった。
大洗はフラッグ車を守りながら逃げつつも、隙をついてついに継続の狙撃手を走行不能にする。
その後、逃げ切るか追いつかれるかの大移動を経て山の頂上に至った両校は一気に斜面を下り降りる。長い滑走の末、継続のミカの最後の一撃は戦車ではなく雪積もる山間部へ打ち込まれた。それによって発生した雪崩で両校多くの車両が走行不能になった。
大洗のフラッグ車として唯一生き残ったアリクイさんチームは集落跡地に逃げ込んだ。程なくして追いついてきた継続高校も残るはフラッグ車を含む2台。木の下で雪に埋もれる戦車に対してじわりとにじり寄る継続高校、これで最後と打ち込まれた弾丸は雪塊を散らすのみ。直後、真横の小屋から打ち込まれたアリクイさんチームの一撃により継続のフラッグ車が走行不能となり、大洗が勝利した。

もう一つの準決勝は黒森峰VS聖グロリアーナ。フィールドは砂漠。状況は黒森峰が有利で、打開するべく聖グロリアーナはオレンジペコの判断で分散していた戦力を合流させる。ダージリンはその判断を尊重する。戦場は岩場に移り、岩の上を陣取り有利に立つのは変わって聖グロ。上から狙われピンチの黒森峰の逸見エリカは、風上から迫る砂嵐を好機として一気に脱出する。戦力は五分五分、これが最後とお互い両校向き合い一騎打ちの様相。最後に勝利したのはわずか2秒差での聖グロであった。そして聖グロの生徒として・・・・・・・・・そこに現れたのは、センチュリオン島田愛里寿であった――。

 

めちゃくちゃ面白かった。
ストーリー全体はチームプレーが光っていた。組織論としても爽快だった。

隊長の西住みほが離脱した大洗がどう立て直すのかと思っていたところ、さほど動揺なく指揮を執れる杏がすごくカッコいい。お膳立てで隊長を任されている桃が相変わらず慌てふためいている点もなおさら強調されてしまう。

そしてカメさん生徒会チームも脱落してしまい再び大ピンチになった大洗が、ウサギさん1年生チーム澤梓を隊長に決めるのも非常にワクワクした。学年に関係なくお互いに適性を考えての人選だし、梓を推薦したのもたしかカバさん歴女チームではなかったか。
足踏みが許されない状況下でシームレスに組織として次の体制を整えていく様はまるで女子高生とは思えない統率だった。その点に特化して感動してしまった。

思えば作品の当初、大洗ではみほだけが唯一の戦車道経験者だった。そしてみほはそのカリスマ性を遺憾なく発揮してきた。そんなみほに甘えるだけでなく。みほ不在でも残存メンバーが自分たちで考えて連携していく様子は本当に見事だし、日本の全サラリーマンに見てほしい(何目線だ)。

中盤からはひたすらダイナミックな山滑り。
正直個人的にはもっと緊迫した心理戦や相手の裏をかく大胆不敵な作戦遂行を見ていたかったところだけど、それは序盤の狙撃戦でやってしまったのでバランスを取るためだろう。

パウダースノーを駆け降りるような爽快感で戦車が右に左にドリフトしながら撃ち合いしていく様子はさながらジェットコースターに乗っている気分だった。この映像体験のためだけにでも映画館に行く意義はある。
(まぁ両校猛スピードで山を下っているにしては結構このシーンが長いので、山の斜面長すぎるだろとは思ったが。無限に長い斜面があったっていいんだけどね。)


最後の心理戦も面白かった。大洗のフラッグ車として唯一残ったアリクイさんチームが短時間で戦車そっくりの雪像を作り、継続を出し抜いた。継続としても見え見えの囮に警戒心を抱きつつも、短時間にここまでの雪像が作れるとは思わず結果的に罠にはまってしまったのだろう。最後の最後に心理戦が加わって、私が大好きなかたちで対戦は幕を閉じた。

一方の黒森峰VS聖グロも見どころ満載。戦況が互角のままシーソーゲームで推移した。優雅さを貫く聖グロに対して、逸見エリカ率いる新生黒森峰の「泥臭くても勝利を目指す」姿勢がはっきり比較される構図だった。結果的に負けはしたものの、その潔さこそがエリカが多くのガルパンファンから好かれる所以なのだろう。

各校ともに「世代交代」の様子が見られた。聖グロも戦略立案はオレンジペコが担い、ダージリンはそれを尊重していた。自分の世代の引退を視野に入れ、戦車道としては勝利を目指しつつも並行して人材育成を進める様子は本当に組織として美しい。日本の全サラリーマンに見てほしい(2回目)。


緊迫した読み合いとダイナミックなアクションがストーリー上にバランスよく配置された大変良い回だった。
それにしてもこの劇場版最終章、第2話が2019年、第3話が2021年、そして第4話が2023年だから第5話は2025年か‥? 果ては最終第6話は2027年?
シリーズが始まった2012年には「ガルパンおじさん」という単語が遠い存在だったのに、もう私もガチおじさんになるよ‥。

 



(第3話の感想)

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