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たまには長文を

解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ感想

下手に「世界の危機」みたいな仰々しい展開にせず、主人公の周りの平和と幸せにターゲットを絞って描かれたストーリーは手堅く面白かった。

(以下ネタバレあり)

 

正直、見始める前はあまり期待していなかった。
まーた解雇されたさもない主人公が新天地で無双するなろう系か・・と、食傷気味な気分だった。クビにした奴が実は超有能だったことに後から気づいて解雇した側が右往左往するやつ、そんなになろう系界隈では読者の溜飲が下がるテンプレなのだろうか。
しかしスタッフ一覧を見て「監督・追崎史敏」を見つけてしまっては見るしかない。

追崎史敏監督作品、数は多くないもののアスタロッテのおもちゃ!」(2011年)は大好きで私が円盤を購入した数少ない作品の一つだし、「えとたま」(2015年)も大好き。「あっちこっち」(2012年)も悪くなかった記憶がある。


そんなわけで期待を込めて見始めたものの序盤ではまだまだ懐疑的だった。特に主人公よりよっぽど強そうに見える巨乳で優しいヒロインが主人公にベタ惚れする理由が分からなかった。

 


これはまぁ後から思えば村で一番強いヒロインが自分を助けてくれようとした主人公にキュンときたということで納得はしている。
そして展開は一気に進む。冴えない設定で売ってきたはずの主人公が一気に結婚して子供まで生まれたのである。

 


その後の展開は予想外の面白さを見せた。
主人公の真の父親が判明したり、主人公を解雇した落ち目の無能四天王にも相応の背景があったりと、「家族愛」をベースになかなか心に沁みるストーリーだった。


得てしてこの手のなろう系は規模がインフレして世界の危機を煽りがちだけど、本作はあくまで主人公とその周囲の平和と幸せを勝ち取るために各キャラが動いていて、見ていて納得感がどんどん高まっていった。


最終話まで全部見終わった後の満足感は高いということ強調した上で、敢えて1点だけ気になったのはタイトルと合わないことだろうか。
一方的に解雇されたのはかわいそうだけどそれを表現するのは「暗黒」ではない気がするし、(30代)と強調する理由もなかった。なによりスローなセカンドライフでもなさそうだった。
まぁこういう長めのタイトルにして注目を集めないとそもそも読んでもらえないのだろうからそこは理解している。


解雇された有能な30代が新天地で即座にヒロインから惚れられ、結婚して子供が生まれて村長になって~という平和なハッピーエンド。奇を衒ったストーリーも確かにいいけどなんだかんだ言ってもこういうのが良いんだろう。