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たまには長文を

SELECTION PROJECT感想

歌パートのCGは天下一品。2021年末現在で個人的に歴代トップのクオリティを更新した。

(以下ネタバレあり)

 

どれだけCGのクオリティが向上しても、キャラの繊細な表情だけはまだ手描きに分があると思っていた。それが今回ついに同等に追いついた。それだけ歌パートのCGのクオリティが高かった。

楽曲では第5話で詩・栞・まこが歌った「NOiSY MONSTER」が一番好き。
練習シーンと曲調違いすぎない!?というツッコミは置いておく。


一方で脚本ははっきり言って酷かった。

ストーリー序盤では、地方大会で優勝したセイラというキャラが鈴音の才能に驚き、自ら辞退することで2位だった鈴音を繰り上げ優勝に押し上げた。この時にもセイラの獲得していたエール数をわざわざゼロにする謎の演出が非常に気持ち悪かった。 

 

元々アイドルとしてデビューさせるためのオーディションのはずなのに、誰が落ちるかだけにフォーカスされていて、むしろ脱落者の選定がメインであるかのような雰囲気だった。
「結果は投票次第」と散々煽っておきながら最終ステージではファンのエールはどこへやら。お互いに投票して仲間外れを選ばせる非常に気分の悪い展開。
そのくせアニメ公式HPには下記のように示されている。
>そして少女たちの勝敗を決めるのは、リアリティショーを視聴しているユーザーからの投票のみ。
自分たちで作った作中設定と矛盾しているのはあまりに情けない。
このアニメを作るにあたって、制作陣はストーリー会議していないのか?

 

結局最終審査では全員が自分に投票することで辞退する結果になった。見ている分にはまぁこの結末しかないだろうなと予想できた。それはそれとして、お金をかけた番組ならこうならないように誘導するか、無理やり再録して違う結論を捏造しでっちあげそうなもんだが。
鈴音の胸元に心臓手術による大きな手術痕があることを、事情を知らない他のメンバーが「晒し上げる」かたちで問い詰めたのも見ていて気分が悪かった。厳密には「気分が悪いからダメ」と言いたいのではなく、このような見せ方をしなければならなかった理由が後々まで見えなかったことが問題なのである。不快な展開でもストーリーに必要なら受け入れられる。ところが本作ではその必要性が全く見えなかった。それすなわち、ただ気分が悪いだけなのである。

このように脚本家はキャラを駒としか思っていないようで、言い換えれば各キャラに「人の心」がない。
物語の後半、陰湿な選定方法によって最終ステージで辞退を強いられたヒロインたちは路上ライブから再スタートする。しかし番組と違って注目はなかなか集まらない。辞退したという事実をこころよく思っていない人の存在にも気づく。
こうした状況下で彼女たちは再びオーディションをやるという番組サイドの提案を受けたわけだが、どんな神経をしているのだろうか。普通に考えれば「顔も見たくない」と思うのが自然な感情ではないだろうか。


終盤に至ってもキャラはストーリーを進める駒としてしか扱われない。
それは過労で倒れた鈴音をなんとかステージに立たせようとする周りの異常さに現れている。
本当に鈴音のことが心配なら、過労で倒れて救急車で運ばれその後も意識が戻らない鈴音を無理やり起こしてステージに立たせようなんて絶対に考えないはずだからだ。

 

 

動画工房が作ったとは思えない、終始脚本の悪さが引っかかる作品だった。