change direction

たまには長文を

劇場OVA・怪盗クイーンはサーカスがお好き感想

20年前、小学生の頃に読んでいた本の劇場OVAを30歳超えて見るのは面白さ以上に感慨深いものがあった。

(以下ネタバレあり)

 

【あらすじ】
「怪盗の美学」をくすぐる物がないと嘆いていたクイーンが目を付けたのは、持つ者を不幸にする伝説の宝石『リンデンの薔薇』であった。実はこの宝石はリンデンの薔薇などというものではなく、エジプトから盗まれたものであった。それを見抜いたクイーンは本来の持ち主へ返すためこの宝石を盗むことを決める。
事前に予告上を出したクイーンは厳重な警備を掻い潜り屋敷に侵入する。しかし目当ての宝石はサーカス団「セブン・リング・サーカス」に横取りされ失敗に終わってしまう。その後、サーカス団の団長・ホワイトフェイスがクイーンに勝負を持ちかける。その内容は、サーカス最終日に自分から宝石を奪ってみろというものだった。
サーカス最終日、檻から脱走してしまったライオンから子どもを守るためとっさに岩清水刑事がライオンと対峙する。子どもは守られたが、本当の岩清水刑事ならそんなことができるはずがなく他人の変装であることが見破られてしまった。事実、岩清水刑事の正体はジョーカーであった。
程なくしてサーカスにトラブルが発生する。宙づりポールのワイヤーの1本が切れてしまい、乗っていた軽業師が高所から落下しそうになっていた。この状況で助けられるのはクイーンとジョーカーをおいて他にいない。ジョーカーが「チェックメイト」と言うと蜃気楼ミラージュが解かれてサーカス団の催眠術師・シャモン斉藤に変装していたクイーンが正体を現した。本物のシャモン斉藤は新聞記者に変装させられていた。クイーンとジョーカーは空中ブランコを使って軽業師を救出すると、そのまま上空の飛行船・トルバドゥールへ帰還した。
もちろん、リンデンの薔薇もしっかり手中に収めていた。宝石は団長の義足に隠されていた。団長はかつて紛争地域でサーカスを上映した際に地雷によって足を失っていた。義足を活かした演目の最中に、クイーンの催眠をかけられた団員が宝石をり、クイーンへ渡していたのである。
クイーンに勝負を仕掛けた団長の胸の内にあった真の望みは、かつての紛争地域でもう一度サーカスをやることであった。勝負にはクイーンが勝利したが、その心意気を買ったクイーンは飛行船でサーカス団を紛争地域に連れて行く。
公演には当時サーカスを見て目を輝かせていた少女が母となって娘とともに見に来ていた。団長がかつてその少女と交わした「また来るよ」という約束がついに果たされた――。

 

まずは20年前の本のアニメ化に感謝したい。小学生当時の記憶が思い出されて感動的、というより感傷的といった方が近いだろうか。自分も歳を取ったものだ‥。

・報道には確かな証拠が必要
・戦争はバカバカしいもの
といった教育的要素が埋め込まれていて子供向けとして良い作品だし、それでいてストーリーはサーカス最終日にクイーンが2回変装していたことが重要なポイントになっていて、やや難易度の高いシナリオとなっている。このあたりのレベル感が小学校高学年の知的好奇心をくすぐる絶妙なところだろう。

ストーリー構成もうまい。
例えば宙づりポールのワイヤーが切れるシーンの前に軽業師が「今日は安全策の網はいらない」と言うシーンがあり、フラグになっている。
ほかにもスーツにかなりのこだわりを持つ岩清水刑事がサーカス最終日当日はペンキを付けられても気にしていないシーンがあり、正体が発覚するシーンよりも前に別人であることが示唆されている。
団長が義足なのも足音が違うことからクイーンはいち早く見抜いていたし、団長の義足設定が最後の感動的なシーンにも繋がる。
ジョーカーが脱走したライオンを檻に戻すシーンでは、睨んだだけでライオンを従わせることができるのかと思うかもしれないが、プロローグにて猫に対して殺気を放っているシーンがここに繋がっている。

こういうフラグを散りばめる構成ができない脚本家だと展開が場当たり的に見えてしまう。そういう観点から言っても本作は大変良くできていた(上から目線)。

脚本は國澤真理子。
個人的にこの方の名前を見るのは『まじもじるるも』(2014年)以来。

夢水清志郎シリーズのキャラが出てきたのも懐かしい。10作目の笛吹き男とサクセス塾の秘密(2004年)は読んだ記憶があるが完結作までは読んでいない。怪盗クイーンと合わせてまた読みたいな。


青い鳥文庫は小学生当時かなりハマって色々と読んだし、特にこのはやみねかおる作品と松原秀行の『パスワードシリーズ』はかなり好きだったので、人生死ぬまでにもう一度読みたい。


ということで、約20年ぶりに再会した『怪盗クイーンはサーカスがお好き』、手堅い良作で大満足できる作品だった。