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たまには長文を

クリスマスパーティ 前編

新入社員という立場上、参加自由と書かれた半強制イベントに参加せざるを得ない私は、貴重な休日とお金を投げ捨てて「出席」を表明するしかなかった。

有志の若手社員主体で行われる“それ”は、日頃「出会いがない」と嘆く若手にとってまさに千載一遇のチャンスであり、実際これがきっかけで運命の出会いを得てゴールインした先輩もいるというからその影響力は決して小さくない。

故に、浮ついた雰囲気の底にどこかピンと張り詰めた緊張感が漂うのは、「男性はスーツ着用」という指令によるものではない。そこは戦場。底辺同士の傷のなめ合いなど発生し得ない勝負の場である。

そう、我々非モテにとって仕事より気が重くなるそのイベントの名前こそ、
「クリスマスパーティ」
である。

20時という遅めの開始時間に合わせて渋々到着した会場でまず認識したのは、どこからか聞こえてきた「今日は男性より女性参加者の方が微妙に多いらしい」という声だった。

男女比が1:1の状況に置かれることなんて中学3年以来実に10年ぶりとなる。これは事実だ。間違いない。
しかし頭の奥底で何かがひっかかる。10年前ではない、もっと最近、こんな状況があったはずだ。それも大して良い記憶ではない方の……。

ふと、無意識にとある光景を思い出していた。
「あぁそうか……就活の説明会に似ているんだ……」

慣れない1:1の男女比、スーツ姿、始まる前から気の重い自分、漂う緊張感、そしていかにも場慣れしたコミュ力全開な人たち。
これだけの要素が揃って就活を想起しないわけがない。そもそもこのイベント自体、極論すれば「結婚相手」を発掘するための活動そのものではなかったか。

「分かって」はいたけど「考えて」いなかったその事実に頭を殴られたような気がした。ちなみにこの時点で私はまだ会場に到着して入口にいるだけである。

いっそ帰ってしまおうかと逡巡したのち、結局そんなことはできないチキンな私は観念して足を踏み入れた。

「場違い感」、そう表現すれば伝わるだろうか。就活を始めた人間が初めて説明会というものに行った時の、あの感じである。周囲の男たちはここで可愛い子を見つけてあわよくばホテルに“お持ち帰り”しようと画策しているのかと思うと気が滅入った。そしてそれこそが男として「正しいあり方」であって、異常なのは自分の方なのだという事実がさらに重くのしかかってきた。

まだ始まってもいないパーティに対して、私の“精神ポイント”はもうほとんど残っていなかった。ゴミクズぼっちコミュ障童貞の私がこんなところに来たのが間違いだった。本当の本当に、ただただ帰りたかった。

 

しかしその程度のつらさなど、これから始まる精神疲労の、ほんの序章に過ぎなかった――。

 

 


あとがき

というわけで勢いに任せてラノベ風?に書いてみました。前編終わりです。読みづらくてごめんなさい。かなり大袈裟に書いてます。いやホント社会不適合者にこんなイベントは無理ですわ。楽しみたい人だけが参加すればいいのに。来年も開催されるのか知らんけど絶対行かん。
ただ運営チームは色々考えて頑張ってた。彼らの名誉のためにそれだけは言っておく。悪いのは全て社会不適合な俺であって、主催した先輩方は何一つ悪くない。
後編は気が向いたら書くかも。