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たまには長文を

映画 L-エル-感想

そこらの鬱アニメを凌ぐくらい絶望が続く映画だった。

まず一言、言わせてほしい。
メンヘラ ダメ ゼッタイ


(以下、ネタバレ)

 最初にこの映画について簡単に説明しよう。この映画はAcid Black Cherryの第四弾アルバム「L」の世界観を映像化した作品で、主人公エルの波乱と絶望に満ちた人生を広瀬アリスが演じた。

まぁ私はそもそも広瀬アリスを知らないし、広瀬すずの姉と言われてもその広瀬すずも知らないのでキャストについては置いておく。ちなみに背景は全てCGで非常にクオリティが高かった。

ストーリーをかなり強引にまとめると、事故で突然両親を亡くした少女エルが、引き取られた先で叔母から虐待され、当初優しかった叔父からは身体を迫られ、別の街に身を移す。
そこで演劇家を目指す男に助けられ一緒に生活することになるのだが、この男がとてつもない地雷で、エルに暴力を振るっては我に返って謝り続ける。人を疑うことを知らないエルもまたこの男に依存し、見るのも苦しい共依存のドロドロ関係になっていく。
過激化する暴力に耐えられなくなりついに逃げ出したエルは拾われたキャバレーで働き始める。一時とはいえ男から演技について学んでいた彼女は最底辺から一気にのし上がり店を代表する踊り手となった。しかしある時彼女が助けた別の男性に店の金を丸ごと持ち逃げされる事件が発生し責任を取ってクビに。彼女は三度みたび男に裏切られた。
次に身を寄せたパン屋で、コミュ障ながら誠実なパン職人の男性と結ばれ妊娠、ハッピーエンドかと思われたが、出産直前に演劇男に見つかりエルの過去をバラされパン職人は絶句。演劇男はエルを襲い直後に自殺、エルは流産し掴みかけた幸せがまたしても逃げていった――。
数十年後、年老いたエルはボロ着と裸足のまま雪降る街を彷徨い歩き、ついに力尽きて倒れる。一体どこで何を間違ってしまったのか。彼女はただ、「愛」が欲しかっただけなのに――。

(重要な裏の主人公オヴェスについて説明しなかったが、それを書こうとするとあと2倍長くなるので割愛する。)


以下感想。
エルは優しすぎた。それ故他人の悪意に気が付かず、時に不幸を招き寄せ、時に付け込まれ、そして裏切られた。
DV男に捕まる女性特有の「この人には私がいなきゃダメなの! 私だけがこの人の理解者なの!」という感じが非常にリアルで、見ているこっちも苦しかった。

 

エルは決して何かを高望みしていたわけではない。ただ人並みの幸せを求めていただけなのだ。もっと人を疑え、もっと打算的に考えろ、後からそう言うのは簡単だ。しかし今の自分はそんな風に生きているだろうか。おそらく生きていまい。誰だって些細なきっかけでエルのように人生転落する可能性があるのだ。そういう意味では考えさせられる映画だった。

実は物語の最後の最後にちょっとした「救い」はあるのだが、果たしてそれを救いと見做してよいのかは悩ましい。絶望と不幸と裏切りの人生を見せられて、幸せとは何かを考えるのは難しすぎる。

 


それにしてもこの映画、パン職人とオヴェス以外揃いも揃ってメンヘラしかいねぇ……。
上では省略したけど逃げ出したエルを匿ってキャバレーに招き入れた女性も、付き合っているキャバレーのオーナーから暴力を受ける関係だった。もう登場人物ほぼ全員心に問題がある。
私はファンだし、yasuは昔からメンヘラの曲をよく書いてたからいいけれど、そもそもの設定からしてかなり強烈だった。

まぁABCのファンは大なり小なりメンヘラみたいなとこあるし別にいいのかな。

 

どうもネットに触れていると「メンヘラ」というワードの閾値が小さくなって気軽に何度も使ってしまうのだが、この映画を見て改めて実感した。本物のメンヘラはヤバい……。

 

最後になるが、見に行って良かったと思える映画だった。

yasuはのどの病気も治ったようなので次のCDを待ちたいと思う。